教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

2/20 BSプレミアム ヒューマニエンス「"ミトコンドリア"最も古く 最も大切な友人」

人類の祖先と共存の道を選んだミトコンドリア

 今回のテーマはミトコンドリア。細胞の中でエネルギーを生み出す器官として非常に重要である。しかし近年にはどうやら他の生物を体内に取り込んだものらしいことが明らかになってきて注目を浴びている。

 まずミトコンドリアであるが、赤血球以外の全ての細胞に入っているという。人間の大きさを富士山ぐらいとしたら、ミトコンドリアは石ころぐらいだとか。

ミトコンドリア

 

 

20億年前に始まった細胞内共生

 ミトコンドリアと人類の祖先との出会いは20億年前に遡るという。この頃に地球に起こった変化は酸素濃度の急激な上昇。この中で人類の祖先である嫌気性古細菌アーキアは酸素を恐れて細々と生きていたのだが、ここで酸素を取り込んでATPを製造する能力を持つミトコンドリアの祖先と細胞内共生を開始したのだという。ミトコンドリアの産み出すATPは生命活動のエネルギー源であり、酸素を使用することで高効率でATPの合成が可能となることから、ミトコンドリアと共生することで我々の祖先は莫大なエネルギーを手にすることが出来るようになったのだという。そのことによって我々の先祖は複雑化することが出来るようになった。

 このような共生関係はアーキアにとっては明らかに幸福なものだったが、ミトコンドリアの方も糖の調達や外敵からの防御などをアーキアに託すことでATP生産に専念出来るようになったのだという。そのためにミトコンドリアのDNAは2000以上からわずか37個にまで減少したという。なおそれなら別生物でなく細胞自身にミトコンドリアの機能を取り込んでしまえばということも考えるのだが、ATPを生成するためには1ボルトぐらいの高電圧がかかるのでミトコンドリアが損傷することが多く、それを細胞自身の機能に頼らずに自身で直ちに修復するためにこの方が都合が良いのだとか。またミトコンドリアは母性遺伝であり、母親のDNAしか引き継がないという特性もあるという。

 

 

ミトコンドリアと健康の関係

 またミトコンドリアの量はトレーニングで増えるという特性があるという。ミトコンドリアの量を調べるには最大酸素摂取量を調べると良いが、アスリートは一般人よりも筋肉中のミトコンドリアの量が多いことが分かっており、トレーニングすることでミトコンドリアが増加してより激しい運動に対応出来るようになるという。

 しかしミトコンドリアも限界がある。ATPの合成の際に活性酸素が生成するので、それによってミトコンドリアやDNAに変異が起こることがあるという。そうなると細胞自体が老化して健康を損なうことになる。しかしその際、ミトコンドリアは融合するミトコンドリアダイナミクスや損傷部分を切り離したりすることで能力を再生させることが出来るのだという。ミトコンドリアは約80%のミトコンドリアDNAが変異しない限り正常な機能が保たれるという。

 近年、ミトコンドリアの研究が急速に進んでおり、様々な病気にミトコンドリアの働きが関与している可能性が浮上しているという。脳梗塞や血管性認知症はミトコンドリアの異常に基づいているのではないかという報告がなされており、これの治療方法としてミトコンドリアの細胞間移動が検討されているという。またあらゆる病気に対応出来る治療として、ミトコンドリアの断片化を解消する方法も研究されている。特殊な薬剤を投与することで、細胞内の掃除システムであるオートファジーを促進して、不具合のあるミトコンドリアを除去して新たなミトコンドリアが再生するのだという。

 

 

 以上、ミトコンドリアに注目した話。番組ではミトコンドリアの働きを紹介するためにミトコンドリアことミトコとヒッキー男の同棲物語の寸劇で紹介しているが、まあ番組を見せる工夫であるが、これ自体は不要(笑)。

 私が学校で生物を習った頃は、ミトコンドリアは単なる細胞内器官という位置づけだったのだが、そこから外来の生命との共存となったのだから、かなり解釈が変わったものである。しかし細胞とはこのような柔軟性を有していたと言うことか。ここから広がる妄想としては、ではさらに様々な機能を持つ微生物を細胞内に取り込むことが出来たら、新たな能力を有する新人類を誕生させられるのではないかという話である。実際にいずれはその線に沿った研究も出そうな気もするが、ここでもまた倫理の問題が絡んできそう。

 

 

忙しい方のための今回の要点

・身体の全ての細胞にあるミトコンドリアは、そもそも20億年前に我々の祖先である古細菌アーキアが、ミトコンドリアの祖先の細菌を細胞内共生の形で取り込んだことによる。
・ミトコンドリアは酸素を使って高効率でATPを合成することが出来るので、嫌気性細菌であったアーキアは、危険な酸素を除去出来ると共に、膨大なエネルギーを得ることによって進化を行うことが出来た。
・一方のミトコンドリアは栄養の確保や外敵からの防御をアーキアに託すことで、自身はATP合成に専念、そのことにより2000以上あったミトコンドリアDNAは37個にまで減少した。
・細胞内のミトコンドリアはトレーニングにより増加、それによって筋肉などはより力を発揮出来るようになることが分かっている。
・しかしミトコンドリアはATP合成の際に生じる活性酸素で傷ついて機能低下することがあり、それが様々な病気の原因になることが分かってきた。
・ミトコンドリアの機能が低下した時、他のミトコンドリアと合体して機能回復するミトコンドリアダイナミクスや、劣化部分を切り離して分解するオートファジーなどが行われる。
・近年の研究では細胞内でのオートファジーを高めることでミトコンドリアの機能を回復し、病気を治療するという方法の研究が行われている。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・しかし今回の寸劇、何か今時多いオタの妄想アニメに近いものを感じた。ヒキニート君に対して、ミトコさんがあまりに都合良すぎる女性のような印象。まあ実際でも細胞内共生の結果は、ミトコンドリアよりもアーキアの方がメリットがかなり大きかったような気がする。

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