気まぐれな友人「ネコ」
今回のテーマはまたも唐突なことにネコ。現在ネコブームなどといわれるが、今ひとつつかみ所無いところのある生物である。そのネコについて斬り込む。ネコとの共生は1万年前の農耕を開始した頃から、ネズミを捕るために人に飼われるようになったという。
ネコと犬の違いであるが、犬はトレーナーの指示に従おうとするのに、ネコは気分次第でトレーナーの指示なんて完全に無視である。どうやらネコ様は最上位に位置して人間よりも偉いらしい。そのためにネコ研究は犬の研究よりも圧倒的に大変で、論文の類いも少ないという。そこでネコの研究者は研究のために実験室をネコの住まいにしてしまって、そこに学生が入って研究をさせてもらうという形にしているとか。
なおネコと触れあうことで前頭前野が活性化するが、猫をなでる、遊ぶ、指示をする、餌をやるで、指示をする時が一番前頭前野が活性化し、さらにネコが指示に従わない時の方が活性化したという。どうやらネコが指示従わないことにより、どのように対応するか考えることで活性化したのではとのこと。これを認知症防止などにつなげられないかなどと言われている。
ネコが液体となる理由
またネコの骨格には実は人との共通点があるという。ネコの前足はヒトの手のように自在に動くのだが、それはネコの骨格が樹上で暮らしていた我々の祖先の形を引いているのだという。肘の関節を見た場合、犬は上腕の骨の関節に遊びがないことから前足が前後にしか動かないのに対し、ネコとヒトはここに遊びがあるので前腕を内側に向けることが出来るのだという。さらにネコは液体などと言われるが、これは腰椎が幅が狭くて長い形を取っていることで、非常に柔軟に骨が曲がるのだという。そのために自在に胴が動くのだという。また皮にかなり余裕があることも液体っぽくなる理由だとか。
またネコは64000ヘルツの高音まで聞こえており、ヒトよりはかなり聴覚がよい。この聴覚を使ってヒトの言葉もある程度理解しているのではと言う。ネコの名前を飼い主でない人に呼ばれても反応が薄いが、飼い主に呼ばれると反応するという。つまりはネコは飼い主の声を判別しているという。さらに名前を認識しているかの実験として、複数の猫が飼われているところで、パソコンの前で名前を呼ばせて、その直後に名前と違うネコを出す場合と、名前のネコを出す場合を比較した時、仲間を違った場合の方がネコがモニターをよく見たという。これはネコが違和感を持って注意を払っていたと言う意味であり、ネコが名前を認識していると言うことが証明されたという。なおネコが想い出を持っているという実験結果もあるという。
ネコはとにかくヒトの言うとおりに動かない動物だが、ネコがヒトの視線にどう反応するかを実験したところ、ネコに視線を向けると視線を逸らすのに、ネコから視線を外すとネコがヒトに視線を向けるようになるという。またネコはヒトとの関わりで行動を変えており、ミャーミャーという鳴き声は実は大人は使わないものであるのに、ヒトとの関わりで使うようになったのだという。またゴロゴロという音は餌を要求する時に高い音の成分が加わっており、これは赤ん坊の泣き声と同じ周波数域であるという。これはネコのアピールなのではという。さらには顔の形もヒトと関わり合うにつれて鼻筋が短くなって垂れ目になるという変化が起こっており、これはネオテニー(幼形成熟)ではないかという。
三毛猫の秘密
またオスの三毛猫は生まれないと言われているが、これは遺伝子が絡んでいるという。三毛猫のクローンを作ったところ、全く模様が変わったという報告がある。三毛猫の遺伝子はメスのX染色体の一方に黒、もう一方に茶色の遺伝子があるのだという。そしてそのスイッチが入る遺伝子を研究したところ、元々は黒の遺伝子が変異して茶色になることが分かったという。大昔には黒の遺伝子がX染色体にあるだけだったのが、あるメスの生殖細胞で茶色への変異が起こり、これがオスとの交配で受け継がれてそれが世界に拡散したのではという。世界中の三毛猫は実はたった一匹の子孫であるという。なお何色が出るかは遺伝子で決まるが、どこに色が出るかはランダムだとのことでこれがクローンで模様が違った理由とのこと。
以上、ネコについて。ネコが気まぐれであるし、飼い主と他を区別するということは実感として良く分かります。私の妹が一匹の野良を保護ネコとして飼い始めたのですが、こいつがものの見事に私に対しては冷淡。とにかく私が近づくと逃げ回る。最近になってようやく慣れてきたのか、たまに触らせてくれるのだが、これもおネコ様の機嫌次第。気持ちが向かなかったら「お前なんかに触らせるか」とばかりにプイッと逃げ出してしまう。確かに扱いにくいところがあるようである。
忙しい方のための今回の要点
・ネコとヒトの付き合いは1万年以上前に遡るが、とにかくネコは犬と違って気まぐれであるので、研究などもやりにくく、それが論文の少なさにつながっている。
・ヒトはネコと触れあうことで前頭前野が活性化するが、ネコが指示にすんなり従わないとがさらに脳を刺激するという。
・猫の前足の肘関節はヒトと同様に遊びがあるので、前足を人の腕と同じように動かせる。また腰の骨が狭くて長いことから身体に柔軟性があり、これがネコが液体と言われる利用だとか。
・またネコは聴覚がよいが、飼い主の声を聞き分けて、また名前についても理解していることが研究で分かった。また想い出なども持っているという。
・ネコもヒトとの関わりで変化している。本来は大人は出さない声をヒトに対して出して餌を要求したりするという。また顔も幼形成熟の形で進化している可能性がある。
・三毛猫はかつてX染色体上の黒色遺伝子が茶色い電子に変異した一匹から引き継がれたものであるという。X染色体の黒と茶色が揃う必要があることから、通常はオスの三毛猫は生まれないという。
忙しくない方のためのどうでもよい点
・三毛猫の雄が生まれないことは以前から聞いていたが、今回かなり明確に理解させてくれた。性染色体と同じところに遺伝子が乗っていたら、確かに性別が影響するよな。
・番組には最初はネコが出ていたのだが、途中からぬいぐるみに変わってしまったってあたりが、いかにもおネコ様。退屈してスタジオに留まっていられなくなったんだろうな。
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