氷河の集積地の源へ
二週連続のアラスカ・カナダの国境の氷河地帯の特集。前回は氷河から流れる川を下ったが、今回はいよいよ氷河の源に向かうらしい。
4つの国立公園からなるこの地帯だが、面積は全部で日本の1/4ほどだとか。その中央にあるセント・イライアス山地が、分厚い氷に覆われた氷河の源である。
海に直接注ぎ込む世界最大級の幅1キロのハバード氷河がある。ここでは氷が直接に海に流れ込んでおり、30階建てのビルを超える高さから氷が崩れ落ちる。この氷河は世界中の氷河が後退する中で、未だに成長を続けている珍しい氷河であり、それはこの氷河の根元に極めて巨大な氷原があるからだという。
氷河を産み出す海沿いの高地
セント・イライアス山地は厚さ1000メートルを超える氷に覆われている。5000メートル級の山々がそびえるのがセント・イライアス山地。氷の上に夏の間だけ利用可能な観光客も利用出来るキャンプがある。中にはキッチンなどの設備があるのだという。シーズンが終了してテントを置いていくと、4メートルもの雪が積もるという。この大量の雪が積もって圧縮されて氷になるのだという。雪が多いのは太平洋から吹く湿った風が高地にぶつかって雲になるから。夕方になると氷原の表面に風でできた凹凸が不思議な模様を浮かび上がらせる。また氷の裂け目のクレバスもあちこちにある。
このような高い山ができたのはプレートの影響だという。ここの山は地層がねじ曲がりながら隆起した後が残っており、地下から湧き上がった花崗岩も多く見られる。太平洋プレートに載った地殻の塊が、北米プレートの下に潜り込む時に、プレート上の花崗岩を押し上げて隆起させたのだという。プレートは現在も動いているので、今でも山は高くなっている。
氷河の水は麓の森を養う。また氷河が削った岩に含まれるミネラルは格好の栄養となる。そして川にはサーモンが遡ってきて、グリズリーがこのサーモンを狙って漁をして冬眠に備える。氷河が生態系を作っている。
カスカウルシュ氷河の周辺には運ばれた土砂が積み上がった場所がある。しかしこの氷河の末端は年々後退しており、氷河はクルアーニ湖に流れ込むのだが、その川原は砂漠のようになっている。これは湖の水位が低下したせいだという。氷河が後退したことで川の流路が変わり、川の流量が激減したのだという。そしてこの川原には新しい植物が進出している。
忙しい方のための今回の要点
・アラスカ・カナダの国境地帯の氷河の源は、セント・イライアス山地に積もった厚さ1000メートルの氷である。
・この氷は大量の雪が降り積もることで生成しており、その雪は湿った太平洋からの風が高山で雲を作ることで降っている。
・この高い山は太平洋プレートが北米プレートの下に沈み込む時、太平洋プレートに乗っかった地殻の塊が北米プレート上の花崗岩を押し上げることで生まれた。
・氷河の水は麓の森林を養っている。しかし近年は氷河の後退で川の流路が変わり、氷河湖の水位が低下するなどの地形の変化が発生している。
忙しくない方のためのどうでもよい点
・例によってのとんでもない風景の連続です。それにしてもこの巨大な氷河でもやはり後退が起こっているとは・・・。これが全部溶けたらそれだけでも気象に影響を与えそうだな。
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