今回のテーマは、そこにいないはずの人が見えてしまったりする「幻視」などが現れる病気。この幻視を体験するVRが開発されているそうだが、扉を開けると誰もいないはずの部屋に人が立っていたり、部屋の隅に人がじっと座っていたり(しかもそれが突然消える)というほとんどホラーの世界。
ホラーの次に急にバックトゥザフューチャーが登場するので「?」となってしまうのだが、この作品で世界的スターになったマイケル・J・フォックスが患ったパーキンソン病がこの病気と同じ物質が原因になっているということ。なおマイケル・J・フォックスは現在、パーキンソン病の治療法の開発のための財団を作って活動しているとか。
さてここで話が最初に戻ってこれらの病気の原因となるのが、レビー小体。これは神経にたまる異常タンパク質の固まりで、これが蓄積することで脳神経に障害が発生してこれらの病気が発症するのだという。冒頭に登場した病気はレビー小体型認知症といい、全国で患者数は推定90万人とのことだから、実はそんなにマイナーな病気ではない。幻視はこの病気の初期に現れやすい症状の一つで、物事の関連性を司る側頭葉が障害を受けることで、例えば服が掛かっているハンガーをみただけで「人がいる」と認識してしまって、そこに人がいないにもかかわらず人がいるように見えてしまうのだという。人間の視覚というのはかなり脳で加工されているというのは有名だが、目の機能自体には異常がないのに、その後の脳での情報処理を誤ってしまって見えないものが見えてしまうということである。
番組にはこの病気を理解してもらうための活動をしている樋口直美氏が登場する。彼女がそのような活動をしているのは、この病気の確定診断がなかなか難しく、彼女も39歳で最初に幻視が見えてから、レビー小体型認知症の診断が出るまで10年かかり、最初はうつと診断されたために薬の副作用で体調が滅茶苦茶になる(レビー小体型認知症の患者は薬の副作用が出やすくなるらしい)などの苦しい体験をしたからとのこと。正しく診断された現在は、薬で病気をコントロールしつつ病気に対しての啓蒙活動をやられているとか。
レビー小体型認知症の初期症状としては、幻視以外に大声で寝言を発して体を激しく動かしたりするレム睡眠行動障害などが出たりするという。一般的に認知症といえば記憶障害のイメージがあるが、この病気の場合は初期には記憶障害があまり現れないのが特徴の一つとのこと。幻覚を見ると言うことで統合失調症などと診断を間違われることがあるのが難しいところとのこと。
で、パーキンソン病の方だが、これは運動を司る脳幹がレビー小体で阻害されることで、手足に意志とは無関係の震えなどが現れ、運動障害の挙げ句に10年ほどで寝たきりになってしまうと言う恐ろしい病気である。しかしこちらについては最近は薬の開発も進み、薬で症状抑えてから運動をする運動療法が効果を上げているとか。早期に発見して対処すれば、ほとんど病気を意識しないで生活できているような人もいるとのこと。こちらはマイケル・J・フォックスの財団なんかの成果なんだろう。
以上、神経の"ゴミ"による病気について。私はレビー小体型認知症がアルツハイマー型認知症の次に多い認知症ということは知っていたが、実はその内容については詳しくは知らなかった。今回知った「幻視」については正直なところかなりショッキングであった。
こうすれば病気を防げますとか、この薬を使えば完治しますというのがないのが辛いところだが、実際に現段階での技術ではそうなんだから仕方ない。ここで「○○には神経細胞を掃除する効果があるので、一日三回食事に取り入れ」なんて言い出したら昔の「あるある大辞典」になってしまうところ。
早期発見が重要な病気であるから、そういう意味でこのような番組で啓蒙するのは非常に意義がある。正直なところ私もそろそろ気になる年になってきているし。
ところでよくよく考えてみると、昔からよくある「幽霊を見た」なんていうのも実はこれではという気がする。となれば「霊感が強い」なんて言っている人は、直ちに脳神経外科に行った方が良いということか。もっともこれに関しては認知症よりも統合失調症の方が多いという説もあるが。
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