地震はプレートの沈み込みのエネルギーで発生する。沈み込むプレートが上側のプレートを引きずるように沈むが、その時に固着層という固定された部分に歪みが溜まっていき、それが限界に達して動く時に地震のエネルギーが解放されることになる。
一方、最近注目されているスロースリップという現象は、固着層のように固定されるのではなく、ゆっくりした速度で徐々に滑っていく現象であるという。実はこのスロースリップが発生することで固着層の歪みのエネルギーを増やしたり、地震の領域を広げるなどにつながって地震の規模を大きくする影響があるということが分かってきた。
今まではスロースリップはネットリとした感触のものであるから、地震のエネルギーを吸収して広がりを防ぐと考えられていたのだが、実験の結果は近くで地震が発生した場合に一気に摩擦力が変化して地盤が滑ってしまうことが判明したのだという。
近いうちに必ず起こると言われている(30年以内の発生確率が70%)南海トラフ地震であるが、この南海トラフの固着層の周辺のデータを調査してみると、幾度かに渡ってスロースリップが場所を変えながら固着層に近づくという現象が観測された。これはスロースリップが発生することで固着層の端の部分に歪みを加えているのだと思われるとのこと。不気味の極みである。
現在、このスロースリップの発生パターンと、地震の発生との関係を解明するべく観測が続けられている。これらの研究が進めば、大地震の予測につながるのではと期待されているとのこと。
なかなかに恐ろしい話。南海トラフの地震が発生すると私の住んでいる辺りでもかなりの被害が発生する可能性があるので他人事では済まない。研究の進歩によって地震が予測できるようになることに期待するが、問題は予測できたとしても地震を阻止は出来ないこと。下手に予測情報だけが先走るとパニックが発生したり、経済に悪影響を及ぼす可能性が高いのでこれが難しい。例えば固着層を少しずつ破壊して地震のエネルギーを少しずつ徐々に開放するとかなんかは出来ないものなんだろうか?
次回のサイエンスZERO