またもや小関裕而登場
朝ドラが再開になったこともあり「一体何回目やねん!」とツッコミ入れたくなる小関裕而が登場ですが、実際には「英雄たちの選択」には登場してますが、この番組自体には登場していなかったようです。何か今年の歴史関係の番組は明智光秀と小関裕而ばかりだ。
にっぽん!歴史鑑定
英雄たちの選択
「六甲おろし」が登場
で、毎度のように福島の豊かな商家で生まれた小関裕而は子どもの頃から音楽の才能を示し・・・と今まで何度もやった内容をなぞります。で、海外の作曲コンクールで賞をもらってコロンビアと契約するが、ヒット曲が全く出ずというあたりまでは今までの繰り返し。
今までの番組に登場しなかったのは、ここで起死回生のチャンスとして野球の応援歌の作曲を依頼されるという話で、この時に作曲したのが「大阪タイガースの歌」でこれがいわゆる「六甲おろし」という話が登場するのであるが、これって他の番組では「野球の応援歌で評価されたけど焼け石に水」という感じでサラッと流されていた話である。なお六甲おろしに対する仕掛けとして、奇数拍を強調するという強拍のテクニックが駆使されており、これは大勢で合唱する時にテンポを取りやすくする細工だとのこと。これは後の軍歌にも登場する。
で、お約束のように「露営の歌」の大ヒットの話になる。この歌のヒットの秘密は短調のメロディであったこと。やはり元気いっぱいの曲調だけでは兵士の本当の心に寄り添うことは出来ないから、哀愁を秘めたメロディの方が彼らに共感を呼ぶという話。六甲おろしでの強拍のテクニックも使用されている。「エール」の音楽を担当した瀬川英史氏は「応援歌を書ける作曲家なら軍歌も書ける」と言っている。
同じパターンは後にパイロット不足の日本が促成パイロットを育成するための予科練の兵士募集のための曲を作曲した際に使用されているという。小関は長調と短調の2パターンの曲を用意したらしいが、上官達には元気な長調の曲が人気だったのに対し、予科練の生徒たちには短調の方が人気でそちらが選ばれた。先の見えない彼らにとっては、短調の哀愁を帯びたメロディの方が心に沿ったのだという。
戦後の平和な時代に登場した「栄冠は君に輝く」
戦後、自らの音楽で若者たちを戦地に送り込んだ小関はそのことを悩むことになる。しかしそこから今度は戦後に立ち上がる人々に対する応援歌を作曲することになる。そして戦後復興の応援歌の最たるものとして「長崎の鐘」が登場する。この曲は短調から終盤に長調に転じるのにポイントがあるという。
戦後の小関は多くの社歌などを作曲したという。常に人々への応援歌だったのだという。そして高校野球のテーマである「栄冠は君に輝く」が登場する。自由に野球が出来る平和な時代が到来したことを喜ぶ曲でもあった。
以上、もう何度も登場した小関裕而について。この番組では新味を出すために曲の技法についての解説を入れ、またキャリアの焦点を野球の応援歌に重点を置いたのが特徴。他の番組が小関の到達点としてクライマックスにオリンピックマーチを置いたのに対し、この番組ではそれに触れずにあえて「栄冠は君に輝く」をクライマックスに持ってきたというのは工夫だろうか。各番組ともに何とか個性を出し、他と違うテーマを出そうというのに苦心しているのは覗える。この番組の場合はテーマは「若者たちの心に寄り添う応援歌」というのを掲げており、この辺りは朝ドラの「エール」というタイトルも意識してのものだろう。
忙しい方のための今回の要点
・幼少時から音楽に興味を持った小関裕而はプロの作曲家になるが、ヒット曲が出なくて苦しむ。そんな時期に大阪タイガースの応援歌を作曲している。
・「露営の歌」の大ヒット後は軍歌の作曲が増える。彼の短調のメロディは兵士達の心に寄り添うものであり、予科練の歌も同様のコンセプトで作曲された。
・戦後は彼は復興に立ち上がる人々の応援歌を作曲したが、その最たるものが「長崎の鐘」であり、この曲は短調が終盤に長調に転じるところがポイントである。
・そして応援歌の集大成として「栄冠は君に輝く」が登場した。
忙しくない方のためのどうでもよい点
・もうこれで一渡り小関裕而は出尽くしたでしょうか。今年だけで「露営の歌」を何回聞かされたことか。そう言えば「買ってくるぞと勇ましくと」いうバーゲンに臨む替え歌が昔あったな。
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