教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

12/8 テレ東系 ガイアの夜明け「これで俺が建て直す!コロナ禍のリアルに迫る」

 以前にコロナ禍の影響で破綻した企業の買収物語を紹介していたが、その時にハッピーな買収ケースとして紹介されていた東京一番フーズによる「寿し常」買収劇の後日談ともう一件の買収劇を紹介している。

tv.ksagi.work

 

現場を効率化して再生を果たした寿し常

 寿し常を買収した東京一番フーズは従業員の雇用を守るとという方針の下で建て直しに挑んでいた。社長の坂本大地氏は200人の従業員のうちの120~130人ぐらいは寿しを握れる職人という寿し常の人材こそが財産だという。

 しかし寿し常は破綻した会社であるわけだから、当然ながら問題を抱えている。その問題点がどこにあるかを坂本氏は実際に現場に「とらふぐ亭」の主任クラスを連れて視察に訪れ、問題点のあぶり出しを行っていた。その結果、従業員のオペレーションにかなり問題があることを明らかにした。

 寿し常の本店は一階に寿司のカウンターがあり、2階は寿司以外の料理の厨房、3、4階は宴会場となっていた。しかしこの2階の厨房に問題があると判断した。2階の厨房が1階とは全く別の組織となっており、1階がフル回転している時でも2階は休憩で応援にも行かないなんてことが起こっていたのだという。

 さらに2階で昼食の看板でもある天丼を調理しているベテラン料理人の動きを観察したところ、動線が混乱していたり非常に無駄が多いことが明らかとなった。そこで厨房のレイアウトを変更して、動線を短縮したところ、それまで天丼の調理に15分かかっていたのが、6分で終了するようになった(これは私も驚いた)。これで熱々の天丼を提供できる上に客の回転率も上がって15%の収益増となったという。さらには効率化によって従業員の労働時間短縮にもつながったという。

 

チェーンの良い意味での強みを生かして稼ぎ頭に

 また寿し常は各店ごとにメニューも価格もバラバラだったが、それをチェーンの強みを生かして統一する方向で動くことにした。また各店の板長を集めて研修したのはフグの調理。免状の必要ない加工フグをしようすることで、寿し常でフグのメニューを出すことにしたのだという。これらの改革で寿し常は売り上げを伸ばし、今や東京一番フーズの稼ぎ頭となっていると言う。

 その頃、「とらふぐ亭」はコロナの拡大による宴会需要の激減で壊滅状態となっていた。例年なら毎日100人以上の予約が入る12月が予約の全くない日もあるという状況。しかしこのような状況の可能性は坂本氏は予測していたという。だからこそ寿し常の買収に動いたのだという。

 東京一番フーズでは生け簀での本マグロの養殖なども行っており、これらも寿し常に投入して売り上げを伸ばしている。

 

プリンメーカーを買収した丸大食品

 一方、意外な会社が意外な会社を買収したという例を紹介。買収した企業はハムで有名な丸大食品。買収相手は神戸プリンで有名なトーラクである。

   

トーラクの神戸プリンはアマゾンでも発売

楽天でも販売されています

 

 丸大はハムのメーカーであるが、創業者はあえて会社名にハムをつけなかったという。それはハム専業ではなくて食品メーカーとして拡大する意図を持っていたからだという。そして現在の丸大食品の売り上げはハムの価格低下などによって、それ以外の食品の比率が上がってきている。

 また丸大食品ではデザート業界にも乗り出し、タピオカやゼリーなどの売り上げを伸ばしていた。しかしデザートコーナーで一番メインとなる主戦場はプリンであり、どうしてもここに勢力を伸ばせない状況が続いていたのだという。そこでプリンにおいて圧倒的な強さを誇るトーラクを買収して、丸大食品の製品とのシナジー効果を狙っている。

 

 前回に紹介された寿し常のその後が気になっていたのですが、さすがにやり手の坂本社長、着々と再生を軌道に乗せているようです。彼自身が現場の人なので厨房の現場を知っているというのが強み。無理矢理にチェーン的なやり方を押し付けて寿し常のカラーを消してしまうことをせずに、寿し常の個性は生かした上で、チェーンの強みを出してコスト低減につなげているのが実に巧みである。チェーンに組み込まれたら効率一辺倒で店自体の個性が消滅してダメになる例も多いのだが(私は大戸屋は早晩そうなると見ている)、その轍を踏まないのはさすがという気がする。

 私は神戸の出身なので、トーラクのプリンには少々思い入れがあり、特にトーラクの焼きプリンなどは私には思い出の味なのであるが、そのトーラクがまさか丸大食品の傘下になっていたとはしらなかった。プリンメーカーとしては実力のあるメーカーなので、その個性を上手くいかしていって欲しいところである。

 

忙しい方のための今回の要点

・寿し常を買収した東京一番フーズでは、寿し常の雇用を守った上での建て直しを進めていた。
・厨房での調理人の動きなどを実際にチェックし、厨房の動線を再設計し、人員を適切は位置することなどで効率をアップし、売り上げを増やした上で労働時間の短縮にもつなげていた。
・東京一番フーズではとらふぐ亭がコロナの影響で宴会需要が壊滅する中、寿し常は坂本社長の読み通りに今は稼ぎ頭となっているという。
・丸大食品はプリンで有名なトーラクを買収した。
・丸大食品はハムだけでなく総合食品メーカーを目指しており、デザート部門にも力を入れているが、なかなか主戦場のプリンに食い込めなかったことからの買収である。
・現在は両者で提携しながらシナジー効果を上げる方策を検討中である。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・今回はハッピーケースになるだろうと思われる買収劇についての紹介。ただ買収劇は実際にはハゲタカに荒らされて見るも無惨ってことになるケースも少なくないので、この番組ではそういう例も紹介して欲しい気はする。もっとも経団連の広告番組としては、そういう事例の紹介はマズいのかも知れないが。やはり竹中路線なんかを持ち上げることを指示されているでしょうから。

次回のガイアの夜明け

tv.ksagi.work

前回のガイアの夜明け

tv.ksagi.work