教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

4/9 テレ東系 ガイアの夜明け「ワークマン 快進撃の舞台裏で…新王者が"失敗"から学んだこと」

好調ワークマンの新展開

 以前にもこの番組で紹介していたワークマンのその後の取り組みについてである。

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予想外に若い女性を取り込めていなかった

 作業着などの専門販売店だったワークマンだが、近年の女性のアウトドアブームなどが後押しとなって、安価なアウトドアウェアとして人気が出て、そこから安価なアパレルとして一般客にも人気が出て快進撃となっている。しかしその一方で一つの問題が浮上していた。

 店に一般客が増えたことで、これまでの顧客だったプロの現場作業員達などから「店に入りにくい」という声が上がってきたのである。今までように汚い格好でプラリと店に入って衣類を調達するということが心理的にしにくくなったというのである。本来は現場作業員のための店であるワークマンにとってこれは大問題であるとして、女性を中心とした一般客をターゲットにしたワークマン女子を新たに開店することとなった。

 新規店舗は開店時に行列が出来る大盛況となり、多くの女性客が訪れた。しかし実はワークマンにとって計算違いが発生していたという。当初は若い女性客を見込んでいたのであるが、実際に来店したのは30代以上の中高年齢女性層が中心であり、見込んでいた若い女性層を取り込めていないことが明らかとなったのである。そこでワークマンとしては対策を打つ必要に迫られた。

 とのことであるのだが、大体この辺りでアパレル業界には全く疎いし興味もない私にも、状況が見えるような気がした。そもそもワークマンが受け入れられた理由は、圧倒的に安価であるにもかかわらず機能性が高いというCPの高さである。そして見た目に的にも「そんなにひどいものでもない」というのがポイントとなっている。だからこそCP重視の中高年女性層に受け入れられたが、そもそももっと服飾につぎ込む費用の高い若い女性層からすれば、「別にブランドというわけでもないし、あえて買おうと思うような服ではない」ということに尽きると思う。つまりは日本の庶民が悪政によって貧困化しているという事実とワークマンの成長はもろにリンクしていると感じられる。つまり善政が施されて庶民が裕福となれば、恐らく中高年齢女性層もワークマンではなくアパレルブランドの洋服に手を出すのではと考える。

 

若手女子社員を起用して大胆な策に出る

 で、ワークマンは対策として若手女子社員の伊藤磨耶氏を起用して大胆な策に挑むこととした。入社当初にはまだ女性の着る服といるイメージがなく、「あまりワークマンバレしたくない」と大胆な発言を会議でした彼女であるが、ここ数年で状況が変わってきていることは感じていたという。彼女としてもここはもう一押ししたい気持ちはあったようだ。

 その彼女が打ち出した大胆な策とは、「かわいい」の本拠である東京ガールズショーに乗り込むということだった。数ある商品の中からつなぎなどを選んで、これを土屋アンナ氏にファッショナブルに着こなしてもらおうという考えである。若い女性に対しての強烈なアピールを目論んでいた。最終的に土屋氏を初めとして5人のモデルが起用されることになる。

 

新たな開発したスーツになる作業服が各方面に衝撃を与える

 一方でワークマンで取り組んでいた新たな挑戦はリバーシブルでスーツとして使える高機能で安価な作業服だった・・・となったところで、前回のワークマンと一緒に放送されていた作業服として使用できるスーツを発売していたオアシススタイルウェアとまともに競合になるぞと感じたのだが、当然のことながら番組側もそのことは承知なので当然のようにそちらにも取材に行っている。

 それによるとオアシススタイルウェアにとってもワークマンの参入は衝撃的ではあるという。そもそも価格帯が全く異なる(1/6らしい)ことから、低価格競争には参画しないという姿勢を打ち出した(生産力や開発力を考えると妥当な決断だと思う)。その代わりにラインナップで勝負をすることにした。上下で3万800円からで有名ブランドとコラボして差別化を図るという。

 さらに紳士服のAOKIではパジャマスーツなるものを販売することにした。伸縮性のある素材を使用して圧迫感がなくこのまま寝ることが出来るのだが、急なリモート会議にそのまま出てもスーツのように見えてパジャマ感がないという、今時のリモートワーク時代を想定した商品である。上下で1万円ちょっと。スーツの既成概念を壊すとしている。

 

東京ガールズショーの反響はまずまず

 さて東京ガールズショーの当日。今年はコロナの影響で無観客でライブ配信されることとなった。観客席で緊張しながら見守る伊藤氏。ライブ配信の視聴者は順調に伸びる。登場モデルは91人で各アパレルが参加する中でいよいよワークマンの出番が。

 持ち時間は7分で、悪天候下をイメージしたステージ上で、作業着の定番であるニッカポッカをファッショナブルに着こなした土屋アンナ氏が登場。続いて迷彩柄のつなぎなどが披露される。前半は悪天候下もモノともしないワークマンのタフさもアピールしている。後半は一転して可愛く着こなすワークマンブランドが登場、普段着としても女性に対しての可愛さをアピール。このショーは21万人が視聴して8割以上は10~20代の女性だという。

 ショーが終了して慌てて土屋氏の元に駆けつける伊藤氏に対して、土屋氏は「今までTGCをやってきて、このファッションが一番好き」とのありがたいお言葉が。単なるリップサービスでないことを強調する土屋氏であるが、思うにファッションショーのブランド製品は大抵はファッションのためのファッションであって実用性皆無のものが多い中、ワークマンのスタンスはあくまで実用から入っているところが彼女にしっくりきたのではという気がした。「現場で汗水流して働く人が生き様として格好良い」という彼女の言葉は私も共感するところ。

 実際に番組では建築現場に働く男性達にこのショーのビデオを見てもらっているが、格好良いとか、「今は肩身が狭いからこれでもっと変わっていってくれたら」という声が出ていた。確かに昔は鳶といえば職業の花形だったのだが、今時の若い女性などからはダサいと見られることが多いようであるので、そこの認識を変えることはするべきだろう。こんなものは理屈でなく若い女性は特にイメージで動くので、そういう意味ではワークマンの発信は有効ではある。

 東京ガールズコレクションから10日後にスカイツリーの下のソラマチでワークマン女子の新店舗がオープンすることとなった。土屋アンナの効果は絶大で、実際に彼女のファッションを求める若い女性などが来店してニッカポッカを買い求めていた。まあさすがにここまで来ると、私のようなジジイは「踊らされすぎだろ」と嫌みの一言も言いたくはなるところではあるが。まあファッションなんて踊らされてなんぼのもんですが。

 

 以上、ワークマンの取り組みについて。若い女性を取り込もうという戦略は重要であり、それは納得できるところであるが、ワークマンが広く受け入れられた最大のポイントは「安価」というところにあるのだから、若い女性に気を取られる内にその原点を忘れないようにということだけは注意とはいいたい。一般アパレルとの勝負に気を取られて高い服になってしまったら本末転倒で価値を失うので。

 実際のところワークマンの売りは、滅茶苦茶安いのに機能的で見た目も悪くはないというものなので、価格が高くなると顧客である現場作業員と中高年女性がそっぽ向きます。まあそんなことはワークマン自体は重々承知であるとは思いますが。まあ若い女性をターゲットにして新ブランドを立ち上げるのでなく、あくまでワークマンブランドで勝負しているのは、やはりワークマンの範囲の中では若い女性を意識するという現れでしょう。

 そう言えば安価で撥水性の高いコートというのは、実は私も以前から求めているところなんだが、私の住んでいる近くにはワークマンの店舗がないんですよね。正直なところ、上から下までイオンブランドでトータルコーディネイトしている(笑)私としては、ワークマンは価格帯といい狙いといい、ジャストミートなんですが。

 

忙しい方のための今回の要点

・作業服販売のワークマンだが、最近は一般客に受け入れられたことで快進撃を続けていた。しかしその一方で従来の顧客層から、一般客が増えたことで店舗に入りにくいという不満が出ていた。
・ワークマンではそのために、女性を中心とした一般客にターゲットを絞ったワークマン女子をオープンした。
・しかし予想外に若い女性を取り込めていないことが判明、それに対して若手女性社員を起用して大胆な対策を打つことになった。
・その方法は東京ガールズショーに討って出ること。この策は成功し、新規にオープンした店舗はなかなか好調である。
・一方ワークマンはスーツとして使用できるリバーシブルの作業着にも取り組み、これは従来から作業の出来るスーツを販売していたメーカーなどに衝撃を与え、様々な反響を呼んでいる。


忙しくない方のためのどうでもよい点

正直なところ、スーツして使用できる作業着ってのは以前から興味があるんですよね。実はオアシススタイルウェアの商品には興味はあったんですが、あれはあくまで「作業も出来るスーツ」であって、価格的にあくまでスーツ価格帯なんですよね。私の求めるのはスーツとして使える普段着なので、オアシス製品は価格帯的にやや高すぎるんです。
・というわけでワークマン製品が私の要求に合致していたらよろしいんですが。とりあえず私がスーツが嫌いで滅多に着ないのは「実用性がないから」なんです。私は普段着でそのままプラッと山に登ったりしてしまうんで。しかしこの年になると普段着るのは実はスーツが一番無難なんです。若い内は若さで補えるのですが、年をいって若さ補正がなくなると、汚いなりをしていたらそのままみすぼらしいジジイになってしまうので、何かとあちこち出入りする場合に支障が出るんです。
・特に私は、山に登った挙げ句にその足でオペラ聴きに行ったりするんで(笑)。両方問題なく対応できる普段着というのを以前から求めている。

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