教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

10/6 NHK 歴史探偵「吉原遊郭」

大歓楽街吉原は幕府の収入源でもあった

 今回は江戸幕府公認の遊郭だった吉原について。ちなみに吉原の紹介は以前ににっぽん!歴史鑑定でも放送されているが、今回の内容は吉原に関するエピソードが中心。

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 まず吉原の立地だが、江戸の町でもかなり外れの位置になる。手前には柳が植えてあり、そこから曲がった道を通って吉原の大門につながるようになっている。吉原は土盛されて人工的に造成された300メートル四方ぐらいの人口都市であり、実はその地形は今日でも残っているという。

 中央には引き手茶屋が軒を並べ、客はそこで遊女達に会うことになる。ちなみに吉原に入ること自体は誰でも出来るので、実は女性の観光客というのも結構いたという。実際に吉原は観光客の喜ぶようなイベントを季節ごとに実施しており、単に風俗街というだけでなく、もっと広くエンターティーメントの場でもあったという。それだけに落ちる金も多く、一日で100両が落ちるともいわれていたという。その中から1割が幕府に献上されることになっており、実は幕府の大きな収入源ともなっていたという。なお番組では資料に基づいて当時の吉原の風景をCG再現するということも行っている。

 

 

大スターだった花魁

 遊女の中でも最上級の花魁となれば、それはスーパースターでもあったという。歴史に残っているのは高尾大夫。そもそも高尾大夫というのは三浦屋に伝わる大名跡であったらしいが、その中でも一番有名な高尾大夫は東京の高尾稲荷神社に祀られている。彼女は那須塩原の貧しい農家の出身で、化石を湯治客に売って生計を支えていたが、たまたま三浦屋の目にとまって養女となって花魁としてデビューすることになったという。

 凜として圧倒的な人気を誇った彼女は、気に入らない相手ならどんな相手でも振ったという。これは花魁という立場だったから可能だったことである。なお様々な伝説も残っており、伊達の殿様を振ったために怒りに触れて惨殺されたという伝説があり、これは歌舞伎の演目にもなっているという。ただ番組では彼女は19才で病死したらしいとされている。若くしての死だが、確かにこれも伝説性を高める理由の一つにはなり得る。

 

 

ひどい待遇に耐えかねた遊女達による放火事件

 一方で吉原の遊女の待遇は幕末になるにつれてだんだんと悪化したという。それは富裕な客層が減ってきたのと、非公認遊郭に対しての幕府の取り締まりが強化され、多くの遊女が吉原に流れてきたことによると言う。そんな中で吉原で放火という大事件が起こる。

 犯人は遊女16人で、彼女たちは自分の店に火を付けた。火を付けられたのは梅本屋という遊郭だが、遊女達はまともに食事も与えられないというような生活を送っていたという。その上にたまりかねて遊女が一人逃亡した時、経営者の佐吉は遊女のリーダー格の豊平に対して、逃亡するようにそそのかしたとの冤罪を着せて折檻までしたらしい。どうもこの件には人気遊女だった豊平の年季明けが近づいており、それを阻止しようという佐吉の魂胆だったようである。これで尊厳さえも踏みにじられて怒り心頭に発した遊女達16人が抗議の意志で店に火を付けたのだという。放火は目立つように二階の屋根に火を付けられ、すぐに消火されたので死傷者はいなかったという。遊女達は自ら出頭して放火の理由について証言したという。

 当時は火付けは大罪であり、火あぶりの刑に処されることも多かった。当時の裁きは遠山金四郎が行ったそうだが、遠山は実行犯の遊女4人を遠島、残りの遊女を禁固刑というかなり軽い刑に処したとのことであるから、情状酌量がかなりあったようである。しかも彼は本来は被害者であったはずの経営者の佐吉を遠島にしている。さすがに遠山の金さんである。

 

 

 以上、吉原に関するエピソードでしたが、吉原の街をCGで再現したり、花魁も再現して登場させるなんてのはいかにもこの番組らしくはあったが、それが実際にどの程度意味があるのかは不明なところもある(笑)。最後には金さん絡みのエピソードまで出て来て内容的には多彩ではあったが、例によって「あまり深くないな」とも感じさせるところもある。

 

 

忙しい方のための今回の要点

・吉原は幕府公認の遊郭で、江戸の外れに人工的に造成された土地で営業されていた。1日に100両が落ちるともいわれていたが、1割は幕府に献上された。
・当時の吉原は誰でも立ち入ることが出来、華やかなイベントなども開催されたことから、女性の観光客も多かったという。
・最上級の遊女である花魁は当時のスーパースターであり、中でも高尾大夫は歌舞伎にも登場するなど伝説の人となっている。
・しかし幕末が近づくにつれ、幕府の非公認遊郭の取り締まり強化などで吉原に流れる遊女が増加したことなどで、遊女の待遇が悪化していく。あまりの仕打ちに耐えかねた遊女が、抗議として店に火を付けた事件も発生している。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・この時代の吉原の流れを受け継いでいると感じられるのは、現在の風俗街よりも、むしろ現在の芸能界なんですよね。横暴な事務所に搾取される芸能人なんて話もネタが尽きないし。そう考えるいわゆる「枕営業」なんてのも普通にありそうだななんて気がしたりする。

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