インド洋に500キロつながる大砂丘
南アフリカのイシマンガリソ自然公園には、長さ200キロの大砂丘が存在する。大砂丘は内陸に広大な湖や湿地という独得の景観を作った。
北の端のコジ湾では白い砂と青い水か入り交じった絶景がある。ここから南に向かって大砂丘がつながる。波と風が砂を積み上げて、砂で出来た山脈が出来ている。これが200キロも続くのである。南端の河口は内陸に続き、15キロでセントルシア湖につながる。ここは多くの野生動物を育んでいる。カバは800頭も棲息している。湖の周りは湿地帯で縦横に獣道が走っている。アフリカ水牛などの大型動物がこの獣道を作る。彼らは湿地に生える草を食糧としている。湿地はライオンなどが入ってきにくいので草食獣の楽園なのだという。
この地では大砂丘が水をせき止めることで内陸に湿地が出来たのである。ここには多くの鳥も生息しており、小魚などを餌にしている。草の先にボールのような巣を作るのはイースタンゴールデンウイーバー。巣作りは雄の仕事で草を一本ずつ編んでいくのだという。早ければ丸一日で丸い巣を作り、雌を招き入れるのだという。
生きた化石に絶滅危惧種が生息する海
イシマンガリソの太陽のほとんど届かない海には生きた化石のシーラカンスが潜んでいる。3億5千前から姿が変わらないとされている。カメラを持って接近して撮影すると自然の様子が観測できないので、無人のカメラを設置してシーラカンスの生態を観察する試みがなされた。その結果、シーラカンスの新たな姿が観察され、研究が進んでいる。
夜になると波打ち際にはオサガメが産卵に現れる。70日ほどで孵化した100個ほどの卵から生まれた赤ちゃんは一斉に海を目指す。
イシマンガリソの河口近くにある町のセントルシアでは、夜になるとカバが町をうろつき回る。アフリカでは毎年カバに襲われて亡くなる人がいる。このカバたちは陸に上がって草を食べるのだという。そもそも彼らの食事の場に人間が町を作ったのだとか。
北のコジ湾では砂の浅瀬で700年続く伝統漁法の仕掛けが並んでいる。定置網のようなもので、魚を集める伝統漁であり、この漁は今でも認められているという。
忙しい方のための今回の要点
・南アフリカのイシマンガリソ自然公園には長さ200キロの大砂丘が連なる。
・これらの砂丘が川などをせき止めた結果、内陸には巨大な湖や湿地帯が広がっている。
・湖にはカバなどが生息し、湿地帯は肉食獣が入ってきにくいため、草食獣の楽園となっている。
・またイシマンガリソの海には生きた化石であるシーラカンスが生息しており、海岸には絶滅危惧種のオサガメが産卵に現れるなど生き物の宝庫である。
・イシマンガリソにある町、セントルシアは夜になるとカバが草を食べるために現れる。
忙しくない方のためのどうでもよい点
・カバが町の中を闊歩するって、壮観というか正直恐いですね。実際にカバに襲われて亡くなる人は結構多いとか。連中はああ見えてかなり凶暴だと言います。
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