若年層の潜み難聴をWHOが警告
集中力が無い、記憶力が落ちたなどの症状は「老化かな」と放置されることが多いが
、実はその裏に「難聴」が潜んでいる可能性があるという話。しかも難聴は最近は若者にも多く、WHOは世界で11億人が将来難聴になるリスクがあると警告しているとか。しかも難聴を甘く見て放置していると認知症などにつながる危険があるという。
若いうちから発生する潜み難聴が問題となっているとのことだが、聞こえていないのに自覚がないのが特徴だとか。番組では耳の検査に特に問題がないという被験者20人が集まってのテストを実施。ここで行われたのは音声を聞いてもらってそれを復唱するというもの(意味のある言葉も意味のない音の羅列も混合)。普通にテストすると平均13個正解。しかしここに日常生活の騒音を加えると正解率は激減。特に聞き間違いの多かった人の検査をすると50代~60代の6人に潜み難聴が見つかったという。
難聴に気付かない原因
彼らは「日常生活に困っていない」と言っているが、実際はこれらの潜み難聴が見つかった人達は雑音がある時に記憶力テストで記憶力の低下が起こっていることが分かったという。それは聞き取ることに脳内のリソースが取られてしまうために、記憶力に対する割り振りが減ったのだとか。実際に被験者は「疲れた」と言っている。
で、この潜み難聴だが、医学的には軽度難聴になるという。難聴の区分は、40~70デシベルの音が聞き取りにくいと中等度難聴(日常会話は60デシベルぐらい)、70~90デシベルが聞き取りにくいと高度難聴で、90デシベル以上だと重度難聴となる。軽度難聴は25~40デシベルが聞き取りにくいというレベル。25デシベルは葉っぱがこすれ合う音ぐらいで、40デシベルはひそひそ声レベルだという。要は日常会話は聞こえているので難聴に気付かないのだという。ただ実際に軽度難聴~中等度難聴にさしかかっている男性は、日常会話には困っている感じがないのに、相手がボソボソ喋る人だったら聞き取りにくかったり、会議で細かい聞き取りで間違いが多かったりなどの支障は出ていたという(これ、まさに私の状況)。
そういうことで専門家達は難聴を看過できないというPRが始まったという。また危機感を抱かせるのは認知症リスクが2倍になるとの調査が出ているからだとか。難聴から人とのコミュニケーションが減ったり、さらには聞こえない音が増えると脳が萎縮するという研究報告もあるとか。さらには外出が減ることでうつや筋力低下にまでつながることもあり得るとか。
聴力低下に対する対策
次は聴力低下を防ぐ方法。聴力に関係するのは蝸牛の中の有毛細胞であるが、これは大きな音で酷使されることで疲労して損傷してしまうのだという。そしてタチが悪いのは1度損傷してしまった有毛細胞は復活しないということ。そこで対策としては、基本的に「大きな音を受けすぎない」になる。WHOが定めた基準によると1日当たり、120デシベルの音は2秒、90デシベルだと34分10秒、80デシベルだと5時間43分などの限界を設定している。なお目覚ましが95デシベル、ドライヤーが80デシベルぐらいで、車内でヘッドフォンで音楽を聴いている時が80デシベルぐらい(と言っているが、この実験での音量は多分多くの人が実際に聞いている音量よりもかなり抑えている)、最大は市場の中が110デシベルだったとか。で、やっぱり専門家が懸念しているのはイヤフォンやヘッドフォンだという。音量を機械の60%ぐらいまでにして欲しいとのこと。また1時間聞いたら10分耳を休ませて欲しいという。
なお急激な聴力低下(突発難聴)には治療法もあるが(と言っても、大抵は血流を良くする薬を服用するぐらいである)、時間が経過すると難しいとか。なお聴力には問題がないが、雑音があると分からなくなる聞き取り困難症という症状もあるが、こちらは耳でなくて脳の問題だとか。また脳では予測に基づいて音を補ったりしているので、これが難聴を分かりにくくしている。
難聴が進んでしまった人への対策は補聴器になる。番組では先の「仕事に支障が出始めている」男性が登場だが、「補聴器と言えば高齢者のイメージがあり、50代での補聴器は抵抗がある」との感想。しかし実際に付けてみると意外に目立たないし、聞こえない部分を補うので不自然な感じがなく、会議などでも聞こえないという問題がなくなったので発言しやすくなったという。他の被験者のテストでも、雑音があっても聞き間違いが減ったし、記憶力も上がったという。
以上、難聴について。番組中に登場した50代の男性については、思わず「これって私?」と言いたくなるぐらい状況が酷似。日常会話には特に不自由を感じていなかったのだが、相手によっては聞き取りが非常に難しくなったり(私の場合は困ったことに、それが直属の上司だった)、会議などでところどころ聞き取れないところが出てきて勘違いも増えてきた。さらには自分が聞こえないことで、自然と日常の声が大きくなって周囲から迷惑がられたり(特に最近の若者は騒音に敏感)などが出てきて、ひたすら「使えない社員」街道を驀進しそうになったので観念して補聴器を試してみたという次第。
なお実際に補聴器を使ってみると、まさに世界が変わります。今まで聞こえてなかった音が聞こえることで、世界はこんなに多くの音に満ちていたんだということが分かりました。一番驚いたのは、自分が動いた時に服などがこすれて発生するガサガサという音があったこと。こんなもの全く聞こえてなかった。確かに慣れるまで最初はややうるさいという感覚もあったが、これは慣れと調整で自然になり、今は逆に外すと耳に栓をされたような気がする状況。もっとも元々「使えない社員」だったのは私の能力の問題もあったようで、こちらはあまり変化なし(笑)。しかし会議の把握度は劇的に変わるので、出世を目指していて不本意な評価を付けられたくない人は、早いうちに補聴器を使用すべきであると断言する。
ただ一番の問題は金銭面。私が購入した一般レベルの補聴器で両耳で30万円台。重度な難聴の方は保険適用もあるようだが、この番組に登場したような軽度難聴では完全に自己負担である。正直なところかなり痛い出費なので、そのことで悩む人も出るだろう(実際に私は1度それで断念した)。しかし経験者として言うと、決断は早い方が良いとアドバイスしておく、いくら引っ張っても残念ながら聴力が回復するということはないので。それに引っ張りすぎると、脳が言葉を適当に聞き流すという習慣がついてしまい、これは間違いなく後々に悪影響がある。
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忙しい方のための今回の要点
・近年、専門家の間で若年者の難聴が懸念されており、WHOの試算では世界で将来11億人が難聴になるという。
・ここで問題となっている難聴は25~40デシベルぐらいが聞き取りにくい軽度難聴。日常会話が60デシベルぐらいなので、生活には不自由していないと気がついていないことが多いという。
・番組のテストでは聴力に問題を感じていない20人の被験者の中で50~60代の6人から難聴が見つかった。
・これらの人は普通の聞き取りは出来るが、そこに生活雑音が加わると極端に聞き取り力の低下が見られた。
・このような人は聞き取りに脳のリソースが取られることから、脳が疲れやすくなり、記憶力の低下なども見られた。
・難聴の放置は認知症のリスクを2倍にし、うつ病などの原因にもなりやすいと指摘されている。
・聴力低下を防ぐ方法は、大きな音を避けること。有毛細胞が傷ついてしまうと復活は不可能であるという現実がある。
・既に難聴が進行している人の場合は補聴器の使用となる。その場合は専門医などに相談するのが良い。
忙しくない方のためのどうでもよい点
・私も50代で補聴器を使用することになったんですが、やっぱり補聴器は70以上の高齢者というイメージがあって抵抗はかなりありました。私は落とすのが嫌なのでインナー型でなくて耳かけ型の補聴器を使っているのですが、実際に装着してみると言わないと相手も特に気がつかないというレベルで、意外と目立ちません。
・ただしこのタイプの場合、眼鏡は特に問題ないんですが、マスクはもろに干渉するのでマスク用のベルトが不可欠ですのでそれだけは要注意。
・もっともインナー型の補聴器の場合、事前に言っておかないと昭和脳の上司なんかは「お前、仕事中にイヤホンで音楽なんて聞くな!!」って言う危険があるので、それは根回ししとく方が良いでしょうね。
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