教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

6/27 BSプレミアム 偉人達の健康診断「あなたもダマされる 松山城はお化け屋敷!?」

 毎度毎度人物紹介を行うこの番組だが、今回は趣向を変えてお城を紹介。そろそろネタが尽きてきたか?

 今回はゲストのカンニング竹山と関根勤が渡邊あゆみと共に松山城を登りながら、松山城に仕組まれた仕掛けについて紹介という内容になっている。

七曲がりに秘められた仕掛け

 まずは松山城を登っていると最初に出くわすのが七曲がり。登城路が複雑に折れ曲がっているのだが、これが巧みな防御の仕掛けだという。

 七曲がりの地形を見るともっと単純な道に出来るのにあえてねじ曲げているのは明らかである。また途中で一旦下がってからまた上がる部分があるという。こういう部分はサグ部といって高速道路などでも渋滞が起こりやすい場所なのだという。松山城ではこのサグ部にさらに鋭角の折れ曲がりを加えることで、城を攻め上ろうとする軍勢が渋滞するように仕掛けているのだという。この城を造った加藤嘉明はとにかく心配性の武将で、念には念を入れるというタイプだったと言うが、それが初っ端から反映しているわけである。

 また七曲がりにすることで方向感覚を失うことになる。これは攻め手の軍勢にとっては不安感を呼ぶことになる。人間は不安感を感じるのは扁桃体であるが、ここが刺激されることで隣接する海馬にも影響し、それが意欲の低下につながるのだとか。これは実は私自身も山城攻めで何度も体験していることでもある。先が見えない、また方向が分からないと言うことで疲労が倍化してしまうのである。こういった時のイライラを鎮めるにはおにぎりなど炭水化物の摂取が良いとしている。炭水化物の摂取でセロトニンが分泌されるので気持ちが落ち着くのだとか。そう言えば私も山城攻めの時はおにぎりを持っていくことが多いな(笑)。

 なお現代人もこの七曲がりと同じような状況を体験することがあるという。それが行列だとか。先頭が見えない行列に並ぶというのはまさにこの状況で、これがかなりのストレスになるのだとか。それを防ぐにはまず最初に行列の先頭を見て、時間がどれぐらいかかるかを読むのが良いとのこと。またどれだけかかるかを推算する式として、マサチューセッツ工科大学のジョン・リトル教授がリトルの法則というものを提案したとのことだが、それは自分の前に並ぶ人数を1分間に新たに並んだ人数で割ったものが待ち時間であるという公式。ただ気になったのは、この公式が成立するのは行列の長さが一定である場合であって、リアルタイムで行列が伸びていっている時には成立しないと思うのだが。現実には私が体験する行列は大抵はリアルタイムで伸びていく行列ばかりである。

 

城に仕掛けられた心理的トラップ

 七曲がりを抜けるとようやく城の本体に到着する。するとここにもトラップが。天守の方向に向かって真っ直ぐ伸びる道があるのだが、そこを進むと行き止まりの崖に突き当たるという仕掛け。しかし実際にこんな単純な仕掛けに引っかかるのだろうかという疑問もあるのだが、戦場という高ストレスな特殊な環境ではあり得るのではとの解説。この時に登場したのが正常性バイアスで、韓国の地下鉄での惨事で有名になった現象。つまり明らかに危険の兆候があっても、自分は大丈夫なはずだという根拠のない確信のせいでその兆候を見落としてしまうという現象。最近は災害時などにもパニックよりもむしろこちらの方が危険性が高いということになり、津波警報などが以前と違ってかなり煽るような内容に変わったりしている。これについては社会が昔に比べてかなり安全性が高くなり、真に危険な状況というのに遭遇する機会が減っていることも関係していると私は感じている。

右回りの謎

 さてようやく天守に到着だが、ここでもまた一つの仕掛けがあるという。それはここまでの通路がことごとく右回りになっていると言うこと。人間は右足が利き足の人が多いので、左回りの方が動きやすいし自然なのだという。だから陸上のトラックなども左回りとなっている。これをあえて行きにくい右回りにすることで不安感を煽る仕掛けだとのこと。なお同様の理由から遊園地のお化け屋敷やジェットコースターなども右回りが多いという。とのことなのだが、私は右回りにするのは右手に持った刀などが使いにくくなるからという理由を聞いたことがあるのだが・・・。

 

水の確保に腐心した加藤嘉明

 また山上に城を築くことになった時、心配性の加藤嘉明が特に気にしたのは水の確保だという。これは朝鮮出兵の蔚山の戦いで加藤嘉明は城兵の救出に行ったのだが、その時に水の不足で多くの城兵が死んだ惨状を見ていたからだという。この経験のために水を特に気にしたとのことだが、山城においては水の確保が生命線なのは加藤嘉明でなくても常識というものである。なおこの時に蔚山城に立て籠もっていたのは加藤清正であり、だからこそ彼が築城した熊本城にはこれでもかとばかりにあちこちに井戸がある。

 ここで水についての解説だが、人間は1日に1.2リットルの水を摂る必要があるとのこと。しかし1回に胃が吸収できる水の量は200ミリリットルなので、数回に分けて飲むことが重要であるとのこと。高齢者は脱水状態になりやすいので注意である。まあなんか取って付けたような情報だが、これがないとこの番組でなくてヒストリアと区別が付かなくなるから仕方ないのだろう(笑)。渡邊あゆみは数年前まであっちにも出てたし。

 で、松山城ではこの水をどうして確保しているかだが、本丸に44メートルもの深さの井戸を備えている。しかし当時の技術ではこれだけの深い穴は掘れないとのこと。実はこれは穴を掘ったものではなく、二つの山頂の間に泉があったのを、その泉の上に土を盛って山頂の間を埋めて本丸を造ったのだという。つまりは井戸を掘ったのではなく、泉を残したのだとか。だから松山城の本丸は非常に細長い形になっているのだとのこと。

 なお松山城建設当時の構造を伝える絵図によると、現在天守閣がある場所には当時は天守閣でなくて溜め池が造られていたという。この溜め池は1万人が50日持ちこたえられる量の水を蓄えられたとのこと。

 

 以上、松山城についてだが、こういうネタにしてしまうとやはり健康関係の情報が無理矢理挿入した感が強くて、番組構成に無理が出てました。これでカンニング竹山と関根勤がいなければヒストリアになるところだし(笑)。

 なお松山城は私は何度も行ってますが、非常に見応えのある良い城です。松山の町も私には初めて行った時から初めて来たと思えないほど空気が馴染んだので、恐らく私の前世は松山と何らかの関わりがあったのではと思ってます(笑)。

 


忙しい方のための今回の要点

・松山城登城路の七曲がりは攻め手の軍勢が渋滞するようにする仕掛けであり、また方向感覚を失わせることで不安感を増す仕掛けでもある。
・松山城内は右回りが多いが、大抵の人間は右足が利き足で左回りの方がしやすいため、通常とはことなる右回りをさせることで不安感を煽る仕掛けでもある。
・松山城本丸の深い井戸は、実は泉の上に土を盛って本丸を造った時に水源として残したものである。加藤嘉明は水の確保にこだわっていたので、現在天守閣がある場所も、建設当時は巨大な溜め池となっていた。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・松山は良いところですよ。松山と言えば鯛飯が有名なんですが、伊予風とか何タイプかあるのが特徴。なお愛媛の隣の香川の讃岐うどんはしっかりした腰のあるうどんなんですが、松山のうどんは軟らかくて関西に近いうどんなんですよね。それと何にでも柑橘類を入れたがるのも特徴(笑)。タルトなんかが良い例です。

 

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