教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

11/10 TBS系 世界遺産「氷河とフィヨルド 世界最大の島グリーンランド」

イヌイットの狩り場が世界遺産に

 グリーンランド南西部の沿岸のフィヨルドから内陸の氷河の先端まで235キロに及ぶイヌイットの狩り場が世界遺産となっている。彼らはこの地で4000年前から狩猟生活を行っている。

 平均気温がマイナス20度にもなるグリーンランド。農業が適さないこの地でイヌイットは狩猟で生活してきた。沿岸部ではイヌイットはアザラシなどを狩っている。彼らはアザラシの生肉を食べることで野菜がないために不足しがちなビタミンを補っている

 陸上では主にトナカイを狩りしている。夏になるとグリーンランドでも平均気温は10度近くなる。渓谷には雪解けで湖が出てくるとそこに動物たちが現れる。夏の狩り場は内陸部で、ここには多くの石積みが見えるが、これはトナカイを脅すためのかかしなのだという。これらと実際に数人の人間が混ざって、トナカイを驚かして追い込んで狩るのだという。

 

住居跡やミイラから分かったイヌイットの暮らし

 ここからはかつての住居跡も見つかっている。イヌイットは数家族が共同生活し、共同で狩りを行って獲物を分け合って生活していたという。夏は内陸部で暮らし、冬になると沿岸部に数百キロ移動する。獲物と共に彼らも移動して暮らしていたのである。

 またイヌイットのミイラも発見されている。女性3人と生後6ヶ月ほどの子供とのことだが、男たちが狩りに出かけた後に残された家族が雪崩などで生き埋めになって亡くなったのではないかと考えられるという。このミイラの衣服は鳥やアザラシの皮からなり、鳥の骨を使用した針を使ってトナカイの腱の糸で縫われていたという。

今でも獲物を残さず利用する暮らしを続ける

 4000年前に北米からカヤックで渡ってきたと考えられるイヌイットは、今でもカヤックを操る技術があるという。最近は定住するようになり、漁業などで生活しているという。彼らが取るのはオオカミ魚と呼ばれる巨大魚。最近は他の地で取れた食物なども食べるようになったとのことだが、それでも狩りの獲物を残さず利用するという生活スタイルは残っており、オオカミ魚は胃袋から肝臓まですべて食材となるそうだ。

 この地はイヌイットの狩猟生活を伝えるものとして世界遺産に指定されている。

 

忙しい方のための今回の要点

・グリーンランド南西部の、沿岸から内陸まで235キロに及ぶイヌイットの狩り場が世界遺産に指定されている。
・イヌイットはここで冬は沿岸部でアザラシなどを狩り、夏は内陸でトナカイなどを狩るという生活を4000年続けてきた。
・イヌイットは数家族で共同生活を行い、共同で狩った獲物を分け合って生きてきた。
・この地で見つかったイヌイットのミイラは、獲物の毛皮をトナカイの腱の糸で縫って衣服を作っており、すべて狩りで得たものでまかなっていたことが分かる。
・今日ではイヌイットも定住するようになってきているが、それでも獲物を残さず使用する文化は残っているという。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・まさに天からの恵みは余さずに利用するという文化です。日本の捕鯨なんかも似たような文化です。これは鯨を捕まえては脂を搾るだけで捨てていた欧米人には理解できない文化でもあります。
・文化に対する無理解と言えば、イヌイットが生肉を食べるのが野蛮だとして、彼らに火を通した肉を食べるように強制しようとした事もあるようです。その結果として、ビタミン不足で病人が続出したと。昔から欧米人は自分達の文化こそが最も優れたものであり、それ以外のものは劣った矯正されるべきものとする見方が根強いですから、これが理由であちこちでトラブルを起こしているし、今現在でもトラブルを起こしています。
・自然を「征服すべきもの」と見る欧米型文化も、そろそろ行き詰まっているような気もするんですが。

 

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