教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

"夢の中身を覗ける?!夢研究の最前線" (8/16 サイエンスZERO「最新リポート!"夢"の科学」から)

夢とは何であるかの研究

 今回のテーマは夢。まあ誰でも見るものであるが、これが一体何なのかについては心理学などの観点から多数議論されてきた。19世紀から20世紀にかけてはフロイトとユングの夢分析が有名。フロイトは現実世界の願望を満たそうとするものと考え(フロイト心理学ってのは、すべての根底に性的衝動があるという説というイメージが私にはある)、ユングの方は太古の人々の経験が集合的無意識として夢に出るというややオカルトチックなもの。

 これが20世紀中頃になると脳波計が発明されたり、レム睡眠の存在が解明されたことなどから医学的観点が加わってくる。ホブソンは夢はランダムな信号で見えてしまうだけで無意味なものだと唱え、21世紀になるとソームズは「夢の源は欲望である」と唱えたとのことで、これはフロイトに戻ったとも言える。

 実際のところはどうなのか分からないが、私の経験から言えば、確かに私の欲望から発したとしか考えられない夢もあるのに対し、あまりにも突拍子なさ過ぎてランダムな信号としか思えないものもあった。またランダムとも欲望とも結びつかない、極めてリアルに日常生活を送る内容(朝起きて、出勤して仕事して帰ってくるまで)も見たことがある(おかげでその日は二日分仕事した気がして倍疲れた)。このことから私の説は「夢にはいろいろある」(笑)。

 

夢研究をしている研究室を訪問

 番組では夢の研究をしている広島大学の小川景子准教授の研究室を訪問して、夢研究の現場を取材している。学生が被験者となって、身体のあちこちにセンサーをつけた上で実際に寝て夢の内容を報告するというテスト。この間、研究者は測定器に張り付いてレム睡眠に入るタイミングを調べているのだから大変である(昼夜逆転の生活をしていると言っていた)。

 で、被験者はファンであるキンプリの夢を見るためにキンプリのメンバーと話をしているというイメージを念じながら就寝したのだが、実際に見たのは「テレビの取材が来ているのに実験が上手くいかなくて先輩に叱られている夢」という爆笑内容。どうやら潜在意識的にテレビの取材のプレッシャーの方がキンプリを上回ってしまったようである。

 

夢を忘れてしまうメカニズム

 夢と言えばすぐに忘れてしまうものだが、それについては食欲に関係していると考えられているMCH神経が関係しているということが研究で分かってきたという。名古屋大学の山中章弘教授の研究によると、レム睡眠中にMCH神経が活発に働いていることが明らかになったという。MCH神経の65%が活発に活動することが分かり、しかもこれらは記憶を司る海馬に接続していることが分かったのだとか。

 ではMCH神経が何の働きをしているのかだが、遺伝子操作したマウスのMCH神経を光刺激で停止したところ、睡眠前に覚えたことを覚醒後に忘れていないということが分かったという。つまりはMCH神経は睡眠中に記憶を消去するという役割を果たしていると考えられるとのこと。この神経が働くので夢も忘れてしまうのではとのこと。

 

夢の中身が見られる!?

 さらに夢の中身を見るという研究も進められている。京都大学の神谷之康教授の研究室では、fMRIを使用して様々な画像を見た時の脳の変化を記録し、そのパターンをAIに学習させることで、逆に睡眠時の脳の変化から画像を引き出そうという研究である。研究の結果、簡単なパターンなどではかなり正確に分かるようになってきたという。現在はさらに複雑な写真などについて検証中で、被験者が車を見ているのか人を見ているのかぐらいは判別できるようなっているという。

 非常に画期的な研究で、本人も自覚していない夢の内容を読み解くということが可能になるので、心理学への応用なんかも期待できそう。ただ下手な使い方をするともろに倫理面の問題が発生しそうである。

 

忙しい方のための今回の要点

・夢とは何であるかと言うことは心理学や脳科学などの面から考察されてきたが、未だに諸説紛々の状況である。
・夢は非常に忘れやすいが、そのことについては摂食行動に関係するとされていたMCH神経が影響していることが分かってきた。MCH神経は睡眠中に働いて、記憶を消去する働きがある。
・また最新研究では脳の血流変化などから被験者がその時に見ている画像を推測することが出来るようになりつつある。これを使用すれば夢の内容を見ることが可能になるかも。

 

忙しくない方のためのどうでもよい点

・まさに「夢のような話」って内容でしたね。コジルリも言ってましたが、夢の中で「これは大発見だぞ」と思うようなアイディアが出ることがあるのですが、起きると大抵忘れてるんですよね。だけど実は覚えていたとしてもとりとめのない実用性のない内容ってのが本当のところ(笑)。睡眠中は理性の部分が寝ているので、どうもかなりお馬鹿になっているようです。私も夢の中で様々なことを思い出そうとしても、そもそも覚えているはずのことを思い出せないことが多いし、夢の中ではまず計算とかは出来ません。論理的な考えというのが出来なくなるのが夢の中ってのが私の経験。そのために突拍子もない壮大なSFを夢で見たこともありますよ・・・ってそうか、こういうのをアイディアを思いついたというのか。

次回のサイエンスZERO

tv.ksagi.work

前回のサイエンスZERO

tv.ksagi.work