教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

9/6 TBS系 世界遺産「100年前の運河!ベルギー水辺の旅」

電気を使わず、水力で船を持ち上げる水力式リフト

 ベルギーの中央運河はドイツとフランスをつなぐ運河である。1917年に開通したこの運河では、67メートルの高低差を克服するための船のエレベーターがある。このエレベーター、実は電気などを使わずに水の力だけで動かしているのだという。この中央運河の水力式リフトが世界遺産となっている。


『世界遺産』9/6(日) 中央運河の水力式リフト 〜 100年前の運河 ベルギー水辺の旅【TBS】

 中央運河は水運のために掘削された。かつてはヨーロッパ中の船が行き交った。当時の主流の船は300トンクラスだったため、このサイズの船が行き交えるように運河は設計されている。開発には35年もかかったという。

 途中には旋回橋や跳ね橋などの人力で動かす仕掛けが多々あるが、その究極が67メートルの丘を越えるために設置された4つの水力リフトである。当時は既に電気はあったものの、この地域には電気は通っていなかった。そこで水力のみで船を持ち上げるようになっている。仕組みは左右の二つのプールを水を満たしたピストンでつなぎ、上側のプールの重みで下側のプールのピストンが押し上げられる仕掛けになっている。だから上側のリフトの方の水かさを増やして下側のリフトよりも重くするのだという。これは現存する世界最古の水力リフトだという。

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水力式リフト

 また水門を開け閉めする動力もタービンで水の流れの力を増速して駆動しているという。またプールの水漏れを防ぐためにリベットを加熱して取り付け、鉄の収縮作用を使って密閉性を高めるという技術が使用されたという。

 

運河を使って石炭を輸送

 この運河が建設された目的は石炭の輸送だった。ベルギーのこの運河の流域は石炭の産地であり、これらの石炭がここから船で輸出されて外貨を稼いだのだという。またこの石炭はヨーロッパの近代化を後押しすることになる。

 現在は2002年に平行して幅広い新たな水路が開削され、ここを1350トンクラスの貨物船が行き来している。そしてここには67メートルの高低差を一気に乗り越える巨大なエレベーターが設置されている。こちらはピストンでなくてケーブルで釣り上げる仕掛けになっている。かつては4つのリフトで1時間以上かけた行程を7分で乗り越えるという。

 用済みとなった水力リフトは取り壊しも検討されたそうだが、地元民などの反対で残れることとなり、今では観光船が行き交うようになっているという。またこの運河を行き交う船で水上生活を送る人も増えているという(ベルギーでは最近、港に住所を置けるようになったらしい)。運河は人々の生活に溶け込んでいる。

 

忙しい方のための今回の要点

・ベルギーの中央運河はドイツとフランスをつないでいる。この運河の途中で67メートルの高低差を乗り越えるための4段の水力リフトが世界遺産となっている。
・この地はかつては電気が通っていなかったため、水力だけで船を上下させるメカニズムが考案された。原理は横並びの上下の二つのプールをピストンで支え、そのピストンをパイプでつないで水が行き来するようにしている。上のプールの方の水を増やして重くすることで、下のプールのピストンを押し上げる。
・この運河はベルギーで生産される石炭を輸出するために作られた。
・今ではもっと幅広い水路が平行して開かれており、大型船が行き交う。67メートルの高低差も一気に乗り越えるようになって時間短縮がなされている。
・ベルギーでは今は運河で水上生活する人も増えているという。

 

忙しくない方のためのどうでもよい点

・氷河の次は運河でした。それにしてもこの水上リフト、単純な仕掛けですが実際に作るとなるとかなり大がかりです。それにかなりの水圧がピストンにかかるはずですから、その水漏れ対策なんかも大変だろうし、なかなかの技術だと思います。
・船やらキャンピングカーでの生活ってのは憧れもあるのですが、どちらにしても日本では現実的ではありません。またこれで一番困るのは、やっぱり仕事なんですよね。どんな生活をするにしても、常にどうやって仕事をするかが最大のネックになる。だから本当にやりたかったことを出来るのは、定年になって年金暮らしになってからだったりする。しかし今は年金は減らされ税金は増え、日本人は一生竹中平蔵などに上前をはねられながらこき使われるしかなくなってしまっている。

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