教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

10/25 サイエンスZERO「"羽毛のある類人猿" カラス 驚異の知力に迫る」

カラスの知能の源である大きな脳

 今回は「頭の良い鳥」として知られているカラス。カラスといえばゴミを荒らすだけというイメージが強いが、どっこいかなりの知能の持ち主なのである。

 日本にいるカラスは2種類。ハシブトガラスとハシボソガラスだが、都会にいるのはハシブトガラスの方らしい。で、このカラスがする行動として、例えば道路に胡桃をおいて車に踏ませて割ったとか、滑り台を滑って遊んでいたとか、ボールで遊んでいたりなどという行動まで観察されている。

 20年以上カラスの研究をしているという宇都宮大学の杉田昭栄氏によると、カラスは知能が高いので遊ぶという行動をとるのだという。杉田氏の専門は神経解剖学だが、カラスを初めて解剖した時には驚いたという。カラスはニワトリよりも身体が小さいのに脳の大きさは3倍あるという。特に大脳が大きいのだという。

 

思っている以上に知能は高い

 さらに行動を観察するといろいろと分かってきたという。まずは特定の人の顔写真を貼った缶にだけ餌を入れて、カラスが人の顔を判別できるかという実験。カラスは2、3日で学習して、餌のある方しかつつかなくなったという。カラスは人の顔を判別できるのである。

 さらに次は模様の数の多い方にだけ餌を入れるという実験をしたのだが、これも一旦覚えると模様の種類を変えても数の多い方だけを選んだという。数を判断しているのである。次には鳩と別の鳥の写真をみせて鳩の方にだけ餌を入れたのだが、この写真をモザイク状にしてもキチンと見分けるカラスがいたという。かなりの知能である。

 鳥類の脳は20年ほど前までは、線条体という身体のバランスなどを司る部分が大半を占め、知的なことはそれれほど出来ないと考えられてきた。しかしその後の研究で哺乳類などの皮質に相当する部分が多いということが分かってきたという。カラスの脳は特に高度な認知機能を司る部分が鳥類の中で極端に多いことも分かってきたという。

 

総合的に判断したり、コミュニケーションを取る能力まである

 ニューカレドニア島に棲息するカレドニアガラスは特に知能が高いことで知られているという。彼らは自ら葉っぱを加工して虫を引っかけて捕るための道具を作るのだという。また複数の装置を組み合わせて餌を取るという高度な実験もクリアしたという(番組ではこの実験をコジルリが体験させられているのだが、これは馬鹿にしすぎでは(笑))。カラスはそれぞれの装置を個別に学習させられているのだが、その知識を組み合わせて総合的に解決法を考えつくことが可能なのだという。また回転する台にリンゴと肉を載せて、台からまずリンゴが出てくるがそれを食べるとそこでストップ、しかしリンゴをパスするとカラスがもっと好きな肉が出てくるという装置を使ったところ、カラスはリンゴを食べるのを我慢して肉が出てくるのを待ったという。つまり目の前の欲望を抑制するという能力さえ持ち合わせているのだという。これは今時の目の前に欲しいものがあったら簡単に盗んでしまう馬鹿ガキよりも知能が高い。

 さらにカラスは鳴き声で想像以上に高度なコミュニケーションを取っていることも分かってきたという。杉田氏の元でカラスの研究をして博士号を取得した塚原直樹氏によると、カラスには分かっているだけでも20種類以上の鳴き声のパターンがあるという。警戒している時や威嚇している時の鳴き声などいろいろのパターンがあるという。これを使用して、カラスの糞害で悩む市街地でカラスの危険を伝える鳴き声を流したところ、カラスが一斉に待避、これを2ヶ月続けたところ市街地からカラスが消えたとのこと・・・なんだが、カラスは学習能力も高いから、その内にこれをフェイクだと学習する可能性もあるのではなんて思ってしまうんだが。

 

 昔から人の近くにいるんだが、その真っ黒い見かけと、知能が高いことから「ずるがしこい」というイメージであまり好かれているとは言い難いカラス。ただ何かかにかで出演パターンは多く、漫画などではしらけたシーンでカラスが「アホー、アホー」と鳴きながら飛び去っていくってのはコテコテの定番だったりする(さすがに演出として古すぎるので、今時それをすると「昭和か!?」ってツッコミが入るが)。

 カラスが知能が高いというのは私も以前に本で読んだことがあり、そこに載っていた例では死んだ仲間を弔っていると思える儀式のようなことまでしているのが観察されたという。三歩歩けば考えていたことを忘れるといわれる「鳥頭」と対極的な鳥である。よくSFの世界では人類並に進化した猿とかイルカとかが出る例があるが、これからはカラス人類なんてパターンも使えるかも。ゴキブリが進化した例は見たことがあるが。

 

忙しい方のための今回の要点

・カラスはかなり知能が高く「遊ぶ」ということさえする。
・カラスのこの知能の高さは身体に比して大きな脳に由来しており、しかも鳥の中でも大脳皮質に当たる部分の比率が極めて高い。
・だからカラスは複数の情報を総合して考えるという能力を有しているという。
・また鳴き声で高度なコミュニケーションをしていることも分かってきており、これを利用してカラスの行動を制御しようという研究もなされている。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・まあ身近なカラスとしては、とにかく「ゴミを荒らすな」の一言ですね。毎度ながらこれには困ったものです。なおカラスは生死を認識できるらしいので、カラス除けにはカラスの死骸を吊して置くのが一番だとか。しかしまさかゴミ捨て場にカラスの死体を置いておくわけにもいかないし。そう言えばカラスの死体に見せかけた黒いビニル製の人形とかかも売ってるな。

     
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