教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

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3/23 テレ東系 ガイアの夜明け「会社が消えた…その時、あなたは? 三洋電機"消滅"から10年」

 三洋電機がPanasonicに吸収されて消滅してからもう10年。会社消滅を体験した社員のその後を追う。

三洋のDNAを引き継ぐ電機会社を立ち上げた営業マン

 三洋電機で営業をしていた亀井隆平氏(56才)は現在、シリウスという小さな電気会社を立ち上げていた。最初は妻と二人で始めた会社だったが、現在は従業員13人、その内の7人が元三洋電機社員だという。三洋電機社員10万人の内、Panasonicに移籍できたのは7000人に過ぎず、多くの社員が路頭に迷ったのだという。

 同社が現在力を入れている新製品は空気清浄機。実はこれは三洋電機が最後に開発していた商品なのだという。次亜塩素酸を使用して空気を除菌できるというのが売りだったのだが、当時は鳴かず飛ばずだったという。しかしこのコロナ禍で除菌が注目されているご時世に勝負をかけたのである。この製品を食塩を入れて次亜塩素酸の濃度を高められるように改良して売り込んでいた。

 また亀井氏は高校でのリクルート活動も実施、しかし今の高校生はは三洋電機と聞いても全く知らないという。三洋電機のDNAを引き継ぐ会社であるシリウスを売り込んで優秀な新人の確保を目指す。

 さらに亀井氏は空気清浄機の海外売り込みも画策していた。その時に問題になるのは海外では綺麗な水が手に入らない可能性があること。汚い水を使用したら次亜塩素酸が上手く生成しない可能性がある。そこで亀井氏は大学の先生の元を訪れて、空気中の水分から水を作り出すという方法が可能かどうかの相談を行った。

 

ライザップの再建に取り組むエリート社員とくら寿司の広報になった元人事部長

 三洋電機の破綻を間近に見ていたのが経営戦略部にいた鎌谷賢之氏(46才)。彼は東大出身の将来を期待されたエリート社員で30代で経営再建のメンバーに加わった。しかし最後には経営が迷走して経営陣からPanasonicへの売却構想を聞いたときに三洋を去る決断をしたという。

 退社後にはソフトバンクを経て、現在はライザップに勤務している。拡大路線が祟ってここ数年赤字が続いているライザップにおいて、鎌谷氏は経営本部長として建て直しに従事している。彼はあらゆる部門の視察をしてコストカットの陣頭に立っている。三洋電機での経験が今日にも生きているという。

 人事部長として8000人のリストラをした岡本浩之氏(59才)は現在はくら寿司に務めていた。岡本氏によるとリストラは麻薬だという。人件費をカットすることで確かに短期的には利益が上がるのだが、それが段々と会社の体力を奪っていくのだという。そして彼は三洋を去った後、二度と人事の仕事は行わないと決意したという。現在はくら寿司でコロナ時代に対応した非接触式店舗の売り込みを広報宣伝IR部長として行っている。

 

人の役に立つ仕事をしようとしている世界の雨堤

 三洋電機はエネループなど電池事業の技術力の高さが知られていた。その電池事業を手がけたのが雨堤徹氏(63才)。彼は今は淡路島で電池の研究所を設立していた。電池を作り続けて40年で未だ現役である。画期的な軽量電池などを開発し、世界の雨堤とまで言われた人物で、三洋電機を去るときには多くの大手メーカーからオファーがあったという。それをすべて断って困っている人に役に立つ仕事をしたいと今の研究所を設立したのだという。

 その雨堤氏が開発して実用化したのが、スーパーのカーゴを簡単に運搬できる装置。カーゴの列につないでスイッチを入れると、戦闘のカーゴを軽く引っ張るだけで数十台のカーゴを軽く輸送できる。これはイオンでの導入が決定した。

 そして現在開発中なのが、電動義手のための小型でパワーのある電池の開発。今の電池だと大きいためにどうしても義手がゴツくなってしまって、特に子供や女性などでは抵抗があるのだという。このような細かい開発を行ってくれるのは雨堤氏のところぐらいしかないとのこと。

 

 以上、頑張る元三洋電機社員の話でした。

 まあ今回登場した人たちはいずれも三洋電機内でも人材として一流であり、三洋電機を出たとしても十分に通用するスキルを持っていた人たちばかりですから、そう暗い話になっていません。しかし実際は、三洋電機内で一つの仕事をコツコツとして来た一般社員とかが一番地獄を見ていると思います。中には入社時にはよらば大樹ぐらいの感覚で三洋電機を選んだのに、そこが倒れて路頭に迷った人も少なくないでしょう。実際には大企業の社員には他所の会社でも通用するスキルというものを持っている者は決して多くないのでそれは大変だったろうと思われます。

 さて振り返って我が身を省みた時、もし現在の勤め先が破綻したら・・・ほぼ間違いなく私は路頭に迷います。再就職するには高齢過ぎる上に、私の専門分野はかなり特殊なものなので汎用性がなく、現在の職場を離れたらこの技能を必要としてくれる職場はイメージできません。その上に技術自体が日進月歩で、恐らくしばらく現場を離れたらあっという間に技術が陳腐化すると来ている。かといって、私は経営方面や人事方面なんかのコネがあるわけでもなければ、そういう技倆があるわけでもないので、そっち方面での転職や起業はまず無理。そして全く違う分野で何か食っていけるような特殊技能といっても・・・全くない。無理矢理に得意分野を上げると文章関係だが、それにしてもこのブログレベルなので、残念ながら抜きんでたというよりも有象無象レベル。というわけで、結局は私のような特別な技術を持たないダメ社員は嫌でも会社にしがみつくしかなくなるわけです。

 

忙しい方のための今回の要点

・三洋電機が消滅して10年、元従業員のその後を追跡。
・元営業の亀井隆平氏(56才)はシリウスという小さな電機会社を立ち上げた。現在は三洋電機が最後に製造した空気清浄機を改良し、世界的な売り込みを狙っている。
・元経営戦略部の鎌谷賢之氏(46才)は現在はライザップで経営再建に取り組み、元人事部長の岡本浩之氏(59才)はくら寿司で広報宣伝IR部長として新形態の店舗の売り込みに奔走している。
・画期的な軽量電池などを開発して世界の雨堤と言われた雨堤徹氏(63才)は、淡路島に電池の研究所を設立して、社会に役に立つ開発を目指している。現在は電動義手に組み込むための小型高性能の電池開発を行っている。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・教訓、優秀な奴はどんな環境の中でも生きていくことが出来るが、そうでない奴はできる限り会社にしがみつけ。
会社にいくら滅私奉公しても会社はコケる時にはコケる。だから常に頭の中にはそのことも考慮に入れ、会社に両足をドップリ突っ込むのではなく、突っ込むのは片足にして、いつでもそれを抜けるぐらいの気持ちでいる方が良い。
会社でのキャリアや能力は30代ぐらいでほぼ決まる。だからその時期を空費してしまったら企業人として終わる。もしその大事な時期をダメな会社やアホな上司でつぶされる可能性がある時は、いっそのこと新天地を目指す決断も重要(私はこれが出来なかった)。

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