教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

4/28 NHK 歴史探偵「飛鳥の八角形古墳」

飛鳥地方での大発見スクープ

 今回は辺り丸ごとが遺跡という飛鳥地方で、新たな大発見があったとして近田アナが現地に飛んでいる。どうも古墳オタの渡邊アナが行きたかったようで、最初から妙なテンションの高さで番組が始まる。

 今回の問題の遺跡は有名な高松塚古墳の北にあるという中尾山古墳。遺跡ではありがちのことだが、外から見ると単なるこんもりとした小さな土山にしか見えない。ここの発掘調査の結果見つかった石組みなどから浮上したキーワードが135度。石積みの各所に135度の角が見えるのだが、これがまさに大発見だという。

 なぜこれが大発見からはまずは135度の意味から考える必要がある。135度とは八角形の内角の角度である。そして八角形と言えば天皇を象徴する形態なのだという。即位の礼などで用いられた高御座も代々八角形である。八と言えば四方八方を照らすと言う意味で天子を示すのだという。八世紀の八角形の古墳と言えば天皇陵以外考えられないという。実際に天武・持統天皇陵の地形を調べたところ八角形であることが分かったという。

 

石室の形から埋葬者を推測する

 古墳と言えば石室があるものだが、中尾山古墳も石室が見つかっている。巨石を組み合わされた石室には鎌倉時代の盗掘の跡があり、扉石が25センチほどとの隙間が空いているという。カメラを入れて調べたところ、平に磨いた壁には水銀朱で塗装した跡が残っている。石室は一辺90センチとやや小さなものであるが、数十トンクラスの巨大な石を組み合わせており、石材の種類は部位によって使い分けており、天井は雨を通しにくい花崗岩、壁は加工しやすい凝灰岩、床は高級石材でもある石英閃緑岩の43トンもの巨石を使用している。これらをピッタリと組み合わせてある。実に高度な技が駆使されており、床面には排水の工夫まで見られるという。

 ではここに埋葬された人物が誰かと言うことであるが、それは石室の大きさが一つのカギであると言う。90センチ立方という大きさでは棺を入れることは出来ない。つまりはここの埋葬者は火葬されているということが考えられる。当時、火葬されたことが知られているのは三名、一人は道昭という高僧であるが、火葬されて散骨されたことが記録に残っており、いくら高僧でも死後に陵が建てられることはあり得ないという。次が持統天皇であるが、持統天皇の埋葬の様子は詳細に記録が残されており、それには合致しないという。最後の可能性が文武天皇だという。大宝律令が制定された頃の天皇である。もっとも現在は別の古墳が文武天皇陵とされており、比較調査の必要があるのだが、例によって「考古学の発展を全力で妨害する宮内庁」のために調査が進まずに調べようがない。

 

金銅四鐶壺の正体について

 なお明治時代にこの地の畑から見つかった金銅四鐶壺というものが存在し、これは今まで中尾山古墳の骨壺ではないかと考えられてきたという。しかし今回、石室に空けられた隙間が25センチに過ぎず、それ以上動かした様子がないことから、ここからこの壺を外に出すことは出来ないことから、否定されることになったという。

 となればこの壺が何であるかであるが、番組では独自の仮説として持統天皇のものではないかと推測している。ただしこの説にはこの壺に記された鳳凰の模様が時代と合致しないという難点がある。これについては、後に改葬された時に使用されたと考えたらあり得ないことではないとしている。

 

 以上、中尾山古墳での新発見について。ここが天皇陵と確定されたら「考古学の発展を全力で妨害することを使命としている」宮内庁の横槍で調査が不可能になるので、今のうちに十二分な調査を実行しておいて欲しいものである。ちなみに現在天皇陵とされている古墳も、大きさや年代などで適当にこじつけられた者が大半で、多くがその信憑性に疑問が持たれている。確認するには調査が必要なのだが、そこは「考古学の発展を全力で妨害することを使命としている」宮内庁の存在によって完全阻止されているので、日本の考古学はそこで立ち往生している。

 古墳オタの渡邊佐和子のテンションの高さが最初から異常であったが(「お城クン」こと千田さんに次いで、「古墳ちゃん」として全国の古墳を回るか?)、そうなればなるほど佐藤二朗の存在の意味が希薄になる。今回でも番組中で何とかその存在感を示そうとしているのが覗えるのだが、そもそもからして彼が特に歴史に造詣が深いわけでもなく、かといって視聴者を代表しているわけでもなく、気の利いた絶妙なコメントを出来るわけでもなくなので、相変わらず「何のためにいるのか分からない」状態。最初の頃の「無駄に上から目線」というのを慎んだのか、パイロット版の頃の不快感は大分緩和されはしたが、そもそも「存在の必要性が皆無」という点には変わりは無い。やっぱりこの佐藤二朗回りの掛け合いが番組の中の無駄として目立つ。

 

忙しい方のための今回の要点

・飛鳥の中尾山古墳は調査の結果、八角形をしていることが明らかとなり、そのことから天皇陵である可能性が浮上してきた。
・また石室が90センチ立方と小型であることから、棺を収めることは出来ないので、埋葬者は火葬された人物と推測される。この時代に火葬された3人の人物の内、文武天皇の可能性が非常に高いが、既に文武天皇陵とされている古墳と比較しないと決定できない(が、それは宮内庁が全力で妨害している)。
・明治時代に近く畑から見つかった金銅四鐶壺は中尾山古墳の骨壺と考えられていたが、今回の発掘の結果、今状態で石室の中から取り出すことは不可能であることが判明した。
・番組ではこれは持統天皇のものではとの独自の推論を立てている。年代が合致しないという難があるが、後に改葬されたと考えれば辻褄は合うという。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・それにしても古墳関連の話が出る度に浮上するのは「宮内庁、邪魔」ということに尽きる。宮内庁としては天皇という存在があからさまに解明されることは避けたいので、昔から常に考古学の発展を全力で妨害している。私は天皇陛下に「そんな大昔の遠い御先祖の墓などは、学術的発展のために調査すればよい」という一言を言ってもらいたいと前から思っている。何も明治天皇陵を暴けと言っているわけではないのだから。

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