教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

5/30 サイエンスZERO「120年に一度のチャンス! 竹 一斉開花の謎に迫る」

日本中の竹が一斉に枯れている?

 今年、日本各地で一斉に竹が枯れるという現象が起こっているという。その原因は竹の開花。今年枯れているハチクは120年に一度花が咲き、その時に竹が枯れてしまうのだという。花びらのない花なので、おしべやめしべがそのまま出て来て、これが受粉して種を作るのだという。竹は稲の仲間で花も同じようなものであるという。なお竹の実も食用に出来るという。実際にコジルリがモウソウチクの種を食べてみているが、乾燥パスタみたいな味だとか。

 竹は普段は地下茎で広がる。地下茎は1年間2メートル伸び、数週間でタケノコが十数メートルに伸びる。しかしこのような繁殖はクローンなので多様性が保てなくなるので、時々遺伝子交配のために開花するのだという。

 では一斉開花の理由だが、これは種を食べ尽くされないためではないかと考えられるという。また開花すると枯れるのは、親世代が子世代の妨げにならないためにだと考えれる。さらに竹の中には120年を測るための遺伝子があることも分かってきたという。花の咲いている竹のDNAを調べたところ、特定の遺伝子のシトシンにメチル化が起こっていたという。これが開花のスイッチになっている可能性があるという。

 

120年という周期の謎

 なぜ120年もの間隔を取るのか。これは地下茎の長さが関係があるという研究がある。竹の発祥地はジャングルとされており、そこには多様な竹が棲息するがここの竹は非常に地下茎が短くて密集して生える株立ちという状態になる。また開花は10ごとぐらいで間隔が短い。

 これをシミュレーションで証明しようとしたのが東京都立大学の立木佑弥助教。彼はコンピュータに竹の観測データを入力してシミュレーションを実施、開花周期の異なる竹を設定し、1500年後に生き残る竹を調べたところ、地下茎が短い場合には周期は11年のものが、地下茎が長い場合は129年のものが生き残ったという。ジャングルのように光が差す場所が限られる場所では、光のある場所にかたまって生えた方が有利だが、温帯の草原では広い範囲に広がった方が有利になることからこうなったのではと推測している。

 

竹が宇宙へ?!

 竹は独得のしなやかさなどを持ち、昔から様々な用途に使用されてきた。竹のそのしなやかさのメカニズムはその構造にあると言う。竹の断面には無数の穴があり、これが水の通る維管束だという。これを取り囲む維管束鞘が鉄に匹敵する強度があるのだという。その回りには多孔質で柔らかい柔組織があるので、強さと柔らかさを併せ持つことになるのだという。

 そしてこの竹を宇宙開発に利用しようという研究がなされている。過酷な宇宙の環境ではプラスチックなどの素材はアウトガスと言って揮発成分が蒸発する現象が発生する。これがセンサーなどに不具合を起こすのだという。これを竹から取り出したセルロースナノファイバーから作った材に置き換えようというのである。セルロースナノファイバーは20ナノメートルの太さの繊維で、これを水分を抜いて板にしてプラスチックの代わりに使うのだという。プラスチックよりも強度があり、熱に強くて揮発成分が少ないのだという(さらに軽そうでもある)。なおセルロースナノファイバーは様々な植物から取れるが、竹のものはさらに性能が向上することが期待出来るとか。

 

 以上、日本人には身近な竹の話。ちなみに竹の侵略性は凄まじく、山林に竹が生えてきたと思えば、あっという間に樹木を駆逐して竹林になってしまうという事例が各地で起こっているとか。だから実は竹林の管理というのも大変であるという。

 今はほとんどがプラスチックに置き換えられてしまいましたが、昔の日本は様々な道具を竹から作っていました。また肉などを買うと竹の皮でくるんでくれたものです。竹からは様々な民芸品が作られ、私の同級生にも竹材店の息子がいましたので、竹は私にとっては子供の頃から非常に馴染んだ素材です。よく弓矢を作って遊んでいた記憶があります。また竹は独得の芳香があり、あれが心地よかったりもします。

 それにしても将来は竹製のロケットが宇宙を飛ぶ可能性があると言うことか。何となく夢がある話だ。

 

忙しい方のための今回の要点

・現在、各地の竹が一斉に枯れる現象が発生しているが、これは竹の開花によるものだという。
・現在枯れているのはハチクで、これは120年周期で開花し、種を作る枯れるのだという。
・竹は通常は地下茎で繁殖するが、これだけだと遺伝的に多様性が出ないので、定期的に遺伝子交配のために開花するようになっているという。
・一斉に開花するのは種が捕食者に食べ尽くされないようにするため、また枯れるのは子世代の妨げにならないためと考えられ、また竹の中には開花周期をコントロールしていると考えられるDNAも見つかったという。
・120年という周期は地下茎の長さと関係するという。地下茎が短いほど開花周期が短い方が有利とのシミュレーションの結果が得られている。
・竹から取り出したセルロースナノファイバーを宇宙船のプラスチックの代わりに使用することで、揮発分の蒸発によるアウトガスが計器などに与える悪影響を避けようという研究がなされている。

 

忙しくない方のためのどうでもよい点

・竹、宇宙を飛ぶってのが興味深いところだ。それにプラスチック的に使用出来たら、今までとは違う竹の建材としての活用法になるのではという気もするのだが。

前回のサイエンスZERO

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