教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

7/11 サイエンスZERO「"子どもの脳"を守れ 脳科学が子育てを変える」

虐待が脳を変化させる

 虐待やネグレクトが子どもの脳に悪影響を与えるという研究報告がなされている。

 幼児の脳は急激な成長過程であり、この間に大人の脳に向かって成長していくのだが、この時期に体罰、暴言、無視、目の前での夫婦げんかなどのマルトリートメントと呼ばれる行為を行うと、脳の発達に悪影響を及ぼすと言うことが分かってきたのだという。

 例えば体罰を受けたグループでは理性を司る前頭前野の一部が19%萎縮していたという。ここは犯罪抑制力とかうつに関わっているという。同様に親同士の激しい喧嘩をみたり、ネグレクトされたものも脳の一部が萎縮していたという。脳のネットワークがうまく形成されないことで萎縮が起こったのだという。さらに不要なネットワークが整理されない場合には肥大が起こり、暴言を受けたグループでは聴覚野の肥大が見られたという。これは会話の理解力などに悪影響を及ぼすという。そのことによって対人関係に問題を生じるという。

 マルトリートメントを受けた子供に多く現れるのが愛着障害だという。親との心理的な絆が築けないことで不安定な行動を起こすという。人と人との距離感を測れないなどの特徴があるという。脳を見ると線条体の働きが悪いのでドーパミン分泌が少なく、いわゆる褒賞系が弱っているという。

 

脳内部の研究と小児精神学による治療法

 脳の中で何が起こっているのかの研究も進んでいる。ネグレクト経験者の中には脳の前頭前野の働きが低い人が多く見られたという。脳の神経回路を増強するミエリンの形成が阻害されているという。マウスの実験では孤立させたマウスの脳のミエリンが正常に形成されないという結果になったという。またこのマウスは落ち着きがなく攻撃的になったという。現在、人間の脳のミエリンの形成のメカニズムの解明を進めている。

 また脳の免疫系の働きに注目した研究もある。脳内の免疫細胞であるミクログリアは脳内に入り込んだ細菌などを攻撃するのだが、強いストレスなどがかかると正常な神経細胞まで攻撃するのだという。マウスの実験でも2時間身体拘束をすることで、海馬で攻撃物質の濃度が大幅に上がったことが確認された。このマウスは記憶に障害を起こしているらしいことも分かったという。なおミクログリアは神経ネットワークを修復する機能も持っていることから、この機能を活かして治療に使うことも考えられている。

 既に小児精神学の治療現場では回復の道筋も見え始めているという。その治療プログラムは子どもが安心を感じられる状況を作り出すこと。しっかりと抱きしめるなどの行為がそうだという。またボール投げなどのように他人とシンクロして行動する行為も脳を活性化するのだという。

 

 子どもの養育環境が脳に物理的な影響を与えるという話。確かにあり得ることではあるとは感じていた。そう言えば最近は特に落ち着きがなくて攻撃的な子どもが増えているので、それは親の養育環境の悪化も反映しているのだろう。またあからさまに良識が欠如していて、明らかに脳に問題があるとしか思えないような犯罪者の場合、生育環境に問題があったという例も少なくない。

 もっともこういう話が出てくると、これがまた親に対しての育児のプレッシャーになりかねないという辺りが気になるところである。そういう時のために「親は無くとも子は育つ」という言葉もあるのではあるが。今一番望まれているのは、やはり育児に対する社会的サポートだろう。

 

忙しい方のための今回の要点

・幼少期の虐待などが子どもの脳の成長に悪影響を及ぼすことが分かってきた。
・例えば体罰を受け続けた子供は、理性を司る前頭前野が萎縮しており、犯罪の抑制やうつなどの気分障害に問題が発生する可能性があるという。
・脳の中を調べたところ、ネグレクトなどをうけることで、神経回路を強化するミエリンの発達が阻害されることなどが分かってきたという。
・また脳内の免疫物質であるミクログリアがストレスなどで脳細胞を攻撃することも分かった。ミクログリアは神経ネットワークを修復する機能ももっていることから、これを利用して脳を治療することも研究されている。
・小児精神学の世界では、子どもに安心感を与えること、他人とシンクロする作業を行うことなどで脳を回復させていけることが分かってきているという。


忙しくない方のためのどうでもよい点

「こいつ頭がぶっ壊れているのでは?」と思うような奴は、本当に脳がぶっ壊れているということでしょうか。問題は子どもの脳はまだ柔軟性があるので回復が見込めますが、そのまま大人になってしまったものの矯正は可能かと言うことですね。

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