世界遺産・ドナウデルタ
今回はルーマニアにあるドナウ河口のドナウデルタ。東京都の2倍の面積がある。
ドイツの黒い森から源を発したドナウ川は、峡谷を抜けてレーゲンスブルクに達する。ここは船で塩を運ぶ拠点だった。オーストラリアに入るとゆったりした流れとなる。中流になるとハンガリーの古都ブダペストを流れる。そしてルーマニアに達し、河口付近にドナウデルタが広がり、そこから黒海に注ぐ。
ドナウデルタにはいくつも枝分かれした川があるが、ここには樫やポプラの森の回りにドナウが運んだ砂が堆積した砂丘がある。ここには野生の馬が暮らしている。ドナウデルタの大半は葦の茂る湿原である。このような湿原は渡り鳥の繁殖地でもある。デルタの風景は日々変わっていく。ドナウが運ぶ大量の砂によって陸地を広げて沖合に島を作る。そのために船の座礁なども起こる。毎年750万トンの砂が堆積している。海岸線は年3メートルも動いている。
葦の茂る湿原の野鳥の楽園
川岸に茂る葦は土砂を堆積されて流れを緩やかにする。葦は天然の浄化フィルターであり、リンや窒素を除いて水を綺麗にしている。またちぎれた葦はそのまま浮島となって漂う。ドナウデルタの4割り以上はこのような浮島とも言われている。またここに集まる渡り鳥は100万羽とも言われている。
増水すると川から水があふれ出す川筋は、水に強い柳が茂っている。根から酸素を取り込んでいるという。この柳の森はコサギの棲息の場となっている。豊かなドナウデルタは多くの鳥を養っている。300種の鳥がやって来ている楽園である。この中のハイイロペリカンは絶滅危惧種であり、またアフリカから渡るモモイロペリカンのヨーロッパ最大の繁殖地である。彼らは浮島に巣を作る。水が増えても水没しないからだという。ここで子育てをするとアフリカに旅立つのだという。
忙しい方のための今回の要点
・ドナウ川が黒海に注ぐルーマニアのドナウデルタは世界遺産となっている。
・ここではドナウ川が運ぶ大量の砂によって海岸線の地形が日々変化している。
・大半は葦の茂る湿原であり、葦は土砂を堆積させて水質を浄化する働きを持つ。
・またちぎれた葦は浮島となって漂い、そこに巣を作る渡り鳥もいる。
・ここは300種100万羽があつまる野鳥の楽園でもある。
忙しくない方のためのどうでもよい点
・葦の水質浄化機能というのは、最近は日本でも注目されています。結局は護岸工事などで川岸を固めてしまって芦原をなくしたことが川の水質悪化につながってしまった原因ともなっています。自然は偉大ってこと。
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