教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

7/17 TBS系 世界遺産「絶景が激変!オーストラリアの大湿地」

野鳥の楽園の広大な湿地

 オーストラリアのカガドゥ国立公園は海から内陸に200キロも続く地域である。乾期には乾いた草原が雨期には大湿地になり、一年中水を湛える湖もある。


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 南の岩山は赤い砂岩がむき出しになった高さ300メートルの断崖がある。大きな亀裂がいくつも走っており、そこでは岩山に溜まった雨が滝となって流れ、岩山を浸食。その砂が北側に積もって大平原となった。川には巨大なイリエワニが7万5千頭も棲息する。

 下流の川の両岸にはマングローブ林が広がる。その根元には多くの小魚が棲息し、それらを餌として多くの野鳥が巣を作っている。海の水深は2メートルほどで海岸にもマングローブ林が広がっている。干満の差が6メートルあるので、満潮になるとマングローブ林の根元は水浸しになる。海岸には火山岩がむき出しだが、これは20億年以上前に溶岩が冷えた固まった層だという。その上に砂が積もって砂岩層が出来た。10億年前に大地が隆起して海が入り込むと、砂岩が浸食によって崩壊、海が後退したら北側に大平原が出来、残った南部は岩山地帯となった。ここは溶岩の大地だったのである。

 

 

鳥たちの楽園と岩山に残る先住民の壁画

 高低差がほとんどないこの地では、雨期になると川は80キロ上流まで氾濫して広大な湿地となる。そして乾期が始まると乾燥した大地ではアポリジニの野焼きが行われる。灰がミネラルとなって豊かな草原を維持するのである。乾いた大地には高さ4メートルを超える巨大な蟻塚が存在する。また青々と葉をつけた木の上にはフライングフォックスというこうもりがたむろしている。日中は暑さを凌ぎ、夕方になると木の実などを求めて飛び立つのだという。

 乾期にも水が絶えないイエローウォーターの湿地では睡蓮の白い花園が広がる。この湿地にも多くの鳥が棲息し、オーストラリアの野鳥の1/3がここに住んでいるという。広大な水場は鳥たちの楽園である。

 東の砂岩の岩山には古代人による壁画が描かれている。5万年前からの先住民によって描かれたもので、岸壁画と言われている。そこにはアポリジニの当時の生活が描かれており、今は絶滅したフクロオオカミなどの姿も見られる。アポリジニの人達は今でも若い人にその絵の技術を伝えている。文字を持たない彼らは絵によって食べられる生き物などを伝えていたのである。筆は草原に生える草を使い、その繊維で精細な絵を描くのである。アポリジニの伝統は今でもこうやって伝えられている。この地は自然の美しさと、これらの岸壁画によって世界遺産に選ばれた。

 

 

忙しい方のための今回の要点

・オーストラリアのカガドゥ国立公園は海から内陸に200キロも続く広大な湿地である。
・川にはワニが棲息し、川沿いのマングローブ林は多くの小魚が棲息し、それを餌とする鳥たちも営巣している。
・この地は20億年前に火山の溶岩が固まって出来、その上に砂岩が堆積した。10億年前に土地が隆起すると海が迫って浸食され、海が後退した後に北部の大平原と、南部に削り残しの岩山が残った。
・湿地の中には乾期でも水が涸れないところもあり、そういうところは鳥たちの楽園となっている。
・東の岩山には古代のアポリジニによる壁画が残っている。文字を持たない彼らはこのような絵によって食べられる動物などの情報を残した。この壁画の技術は今でもアボリジニの文化として伝えられている。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・アポリジニは後に入植した白人達によって徹底的な弾圧や殺戮を受けましたから、よくまあその文化が何とか残っていたものです。大航海時代以降に世界中で白人が起こした悪事は無数にありますが、オーストラリアの地もその典型的な場所の一つになります。

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