教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

11/30 NHK 歴史探偵「出雲"神話の国"の謎」

日本一の高層建築だった出雲大社

 今回のテーマは出雲。古代神話にはよく登場する有名な土地である。NHKの歴史番組でも何度も取り上げられており、今回もそれらの寄せ集め感があり、正直なところ新しい知見は特にない。

 まず最初は出雲大社の紹介を行っているが、最近見つかったという巨大な柱の跡について紹介している。それは巨大な杉の木を3本まとめて寄せ集め、直径3メートルの柱にしていたというもの。この柱を9本立てて、巨大な本殿を形成していたのだという。その本殿は平安時代の書物によると東大寺の大仏殿の45メートルよりも高い建物だったという。これは出雲の権威を示すに効果的な建造物であったろう。

 というわけで当時の出雲大社を復元するということを行っているのだが、これはこの手の番組で今まで何度か行われており、それらと大差ないものが登場している。要は太い柱を格子状の横材でつないで支えた上に本殿を載せるという構造。今回は清水寺を参考にしたとしている。日本には当時から巨木の文化があったので建設は可能だろうとのこと。と、ここまでで番組の半分である。

 

 

地形から来る出雲の繁栄とその終焉

 残りの半分は出雲発展の鍵について調査。その鍵は今も残る神西湖にあるという。今ではそう大きくない汽水湖であるが、1800年前には今の3倍以上の大きさがあり、外海の影響を受けない内海として沿岸の交易ルートをなしていたという。またこの地域は海底が隆起して出来た島根半島に守られる形で神西湖から宍道湖・中海を経由する全長70キロの奇跡の交易ルートをなしていたという。

 出雲は広域の交易を盛んに行っており、全国の産物が出雲から出土するという。また弥生時代に国内では造られなかったはずのガラスも出土しており、これらは海外から持ち込まれたものと考えられるという。朝鮮半島から海流に乗って出雲にたどり着けることから、半島から伝わったのではという説がある。

 また古代出雲の繁栄をもっとも示すのがこの地で出土した358本もの大量の銅剣に銅鐸、銅矛などがある。また銅矛の歯を調べたところ刃に特殊な研ぎを入れており、これは北九州にしか見られない特殊な技術であるという。これらの青銅器は一箇所にまとめて埋められており、弥生中期になって儀式に使用されなくなって埋められたという説もある。

 この地の変化を現すのが古墳の形。この地では四隅突出型という独得の形態の古墳が存在するのだが、3世紀半ばを境に姿を消し、前方後円墳に変化するという。つまりこの時代に大和王権の支配下に組み込まれたのではと言う。実際に古事記においても、オオクニヌシが天照大神に地上を渡す国譲りの神話が残っている。オオクニヌシはその後に縁結びの神として人々に親しまれることになる。

 

 

 以上、出雲についてだが、やっぱり新しい知見は何もなかったな。ちなみに出雲の歴史博物館は私も訪問したことがあるのだが、他では目にすることの出来ない大量の銅剣はひたすら圧倒されるだけで、これを見るだけでこの地のかつての繁栄ぶりが窺い知れるというものである。

 それにしても毎回のことであるが、この番組の中身の薄さには呆れるばかり。ちなみに先週は正岡子規がテーマだったが、あまりに中身がない上に私の嫌いな偉そうなおばさんが登場して五・七・五の蘊蓄まで始めだしたのであまりに不快で無視しました。佐藤二朗だけでも不快指数が限度ギリギリなのに、合わせ技で完全に限界突破してしまいました。ちなみにサイエンスZEROで年に数回ある「五七五でカガク」とかいう回もあまりに中身がなくてくだらないから無視してます。

 

 

忙しい方のための今回の要点

・出雲大社の地面からは杉の巨木を3本まとめて直径3メートルの柱として立てた後が発掘されており、かつてここには45メートル以上の巨大本殿が建設されていたと考えられる。
・出雲の繁栄の源は島根半島に守られた内陸の神西湖・宍道湖・中海を経由する交易路であり、全国の各地とも交易をしていたことが分かっており、また海外との交易も行っていた可能性がある。
・出雲は独自の文化を誇ったが、3世紀半ば以降に大和王権による征服を受けたと考えられる。

 

忙しくない方のためのどうでもよい点

・今回も結局は「中身薄っ、佐藤二朗不要」のこの一言に尽きてしまうんだよな・・・。

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