ヒトの神経ネットワークの特徴
人体の隅々まで張り巡らされている神経。その総延長は地球4周分にもなるという。この神経のネットワークは進化の過程で発達してきた。またヒトの神経にはヒトならではの特徴もあるという。今回のテーマは神経。
まず神経であるが、脳や脊髄の中枢神経と運動神経や感覚神経などの末梢神経に分かれる。この中枢神経は神経の束であり、かなり太いものであるという。このようなネットワークは神経細胞から出来ており、それは中枢も末梢も変わらないのだが実は作られ方が違うという。発生の過程を見ていくと、中枢神経が神経板が膨らんで出来るのに対し、末梢神経はその次に神経堤細胞が各地に散らばって全身で生成するのであるという。なおこの神経堤細胞は神経に限らず、顎の骨やメラニン色素など様々なものを作るという。
またヒトの神経ネットワークの使い方は他の動物とは異なるという。ヒトの神経の回転は他の動物に比べると遅いという。例えば音を聞かせて脳波の動きを測定すると、チンパンジーはN1という音の認識が始まったことを示す脳波が0.06秒で現れるのに対し、ヒトでは0.1秒かかった。そして他の霊長類はさらに早い。これはヒトの大脳の神経細胞の数が多く、だから伝達が遅いがその代わりにじっくりと分析しているのだという。このような反応の遅さは聴覚だけでなく視覚にもあるという。チンパンジーの視覚は非常に認知が早いが、ヒトはゆっくりしている代わりに時間変化など深く認識が出来るようになっていると考えられる。これによってヒトは予測が可能となるのだという。
学習に纏わる神経と自律神経の整え方
また脳神経は年齢と共に劣化すると考えられているが、年齢に関係なく学ぶことは可能である。キーワードはミエリン化。神経細胞の上をオリゴデンドロサイトと呼ばれる細胞が動いてミエリン鞘を巻き付けるのだという。すると神経を伝わる電気信号がミエリン鞘ごとにジャンプして高速化するのだという。これは我々が学習するときに働くシステムであるという。このミエリン化の余地は大人になっても中枢神経には十分にあるのだとのこと。また末梢神経においてもミエリン化が起こる。末梢神経のミエリン化はオリゴデンドロサイトでなくシュワン細胞によってなされるという。また中枢神経が損傷した時の再生方法の研究も進められているが、マウスによると中枢神経の損傷が末梢神経由来の細胞(シュワン細胞)で再生されるということが分かっているという。これを使って人間の中枢神経損傷の治療が期待されるところである。
最後に臓器などを制御している自律神経だが、現代人はこれが病んでいる可能性がある。本来野生の動物などでは交感神経、副交感神経は状況に応じてフルスロットルで働くが、ヒトの場合はどちらも中途半端になっている。これが自律神経失調症につながると考えられる。これをフルで働かせれば自律神経が「整う」可能性がある。そこでその方法の1つと考えられるのが「サウナ」だという。サウナ中では交感神経がオンになり、水風呂に入ると副交感神経がオンになるのだという。これによって「整う」のだという。
以上、ヒトを制御している神経について。神経とは「神の経(みち)」だと言うが、確かにそう思えてきた。なおこの神経は中国医学で言うところの経絡の重要な要素であり、そこに経絡秘孔があって、それをついたら「あべし!」になるってのが「北斗の拳」です(笑)。
なおヒトの神経は反応速度を犠牲にして分析力を高めたということのようであるが、私の神経はさらに反応速度が遅い割には分析力も低いのだが・・・。とりあえず年をいっても学習は可能らしいことは救いだが、それにしても人生半世紀過ぎた頃から、知的衰えは顕著に感じている。とにかく新しいことを覚えにくいのは何とかならんのかってのが本音。ちなみにサウナで自律神経整えるってのは、私の場合は整う前にのびるので無理。
忙しい方のための今回の要点
・ヒトの神経には中枢神経と末梢神経があるが、実は発生の過程でそれぞれの作られ方は異なる。
・ヒトの感覚神経は反応速度を犠牲にして分析能力を高めるようになっている。これが我々の文明を生んだとも考えられる。
・脳神経は年齢と共に劣化すると考えられているが、実は学習は年齢に無関係である。神経細胞がミエリン化することで、神経伝達速度が向上するメカニズムがヒトには備わっている。
・現代人は交感神経や副交感神経をフルに働かせる局面が少ないことから、自律神経のバランスが崩れている場合が多い。これを整えるにはサウナがお勧めだという。
忙しくない方のためのどうでもよい点
・ところで呆れるほど「無神経」なヒトっているが、あれって本当に共感に関する脳神経回路が欠落してるんじゃないかって感じますね。後、そもそも知的回路がまともに構成されてないんじゃないかって奴もいますね。その辺りのメカニズムってどうなんだろう。
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