世界遺産の条件について学ぶ
今回は世界遺産の定義とは何かを学ぶという特別編。
ダ・ヴィンチの有名な作品としては「モナリザ」と「最後の晩餐」が存在するが、このうちで世界遺産なのは「最後の晩餐」だけである。これは世界遺産の条件に「不動産であること」という前提があるからだという。最後の晩餐はミラノの教会の壁画であるため、不動産になることから世界遺産なのだという。一方モナリザはルーブルに掛けられた絵画で移動が可能だから世界遺産ではない。
また南米のガラパゴス諸島は世界遺産だが、ここに生息するウミイグアナは世界遺産ではない。島を保護することで生物を保護する形になる。またオーストリアの山岳鉄道であるゼメリング鉄道は線路やトンネルや橋などは世界遺産だが、車輌は世界遺産ではない。また仏像などは動かせることから世界遺産ではないが、大仏ぐらいになると東大寺と一体の不動産と見なされて世界遺産だという。
自然遺産と文化遺産
次に富士山とエクアドルのサンガイ山。山の姿は非常に似ているが、富士山は文化遺産なのに対して、サンガイ山は自然遺産である。この違いの理由は「顕著な普遍的価値を持つもの」という世界遺産の定義と関連があると言う。サンガイ山は氷河を抱く山や麓の熱帯雨林の中にある標高5300メートルの活火山である。この山は絶滅危惧種であるヤマバクなどの野生動物の生息地である。これらの自然が他に類のない価値があるとして自然遺産に認定された。
これに対して富士山は山としては世界的には比較的平凡なものであるので自然遺産には該当しない。しかし富士山は昔から絵画などにされてヨーロッパなどに影響を与えた。このような芸術との結びつき。また古より信仰の対象とされてきたことなどから文化遺産として認定されたのだという。だから登録名称は「富士山-信仰の対象と芸術の源泉」となっている。
負の遺産に一風変わった遺産
また世界遺産の中には負の遺産も存在する。ビキニ環礁などが人類が閣の時代に突入した象徴として世界遺産に登録されている。ここでの実験では長門が標的艦とされ、二度の爆発で海に沈んだ。今でも海底に沈んだ長門が存在するという。さらにビキニ環礁では水爆実験も行われ島が吹き飛んだ。この時に第二福竜丸が被爆している。
さらに原爆ドームやアウシュビッツ強制収容所なども人類の愚行の象徴として世界遺産に登録されている。ユネスコ憲章には「戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和の砦を築かなければならない」と記されている。また人の愚行として奴隷制度の象徴であるセネガルのゴレ島も世界遺産に登録されている。
最後に意外な世界遺産として、フィンランドのムスタヴィーリ島の地面にある小さな穴がある。これは190年前に開けられた測量点だという。地球の大きさを測る一大プロジェクトの痕跡である。天文学者のフリードリッヒ・シュトルーヴェが指揮して1816~1855年にヨーロッパを縦断して実施された。各地にある測量点が人類の偉業の象徴として世界遺産に認定された。一番南の測量点はウクライナにあるという。この測定で地球の大きさが正確に測定された。
忙しい方のための今回の要点
・世界遺産の定義について学習する特別企画。
・まず世界遺産は不動産である必要がある。だから壁画である「最後の晩餐」は世界遺産だが、「モナリザ」は世界遺産ではない。なお仏像は動かせるので世界遺産にはならないが、大仏ぐらいになると寺院の一部として東大寺と共に世界遺産となっている。
・また富士山は文化遺産で良く似たシルエットのサンガイ山は自然遺産である。サンガイ山はそこに絶滅危惧種などが生息する自然環境からかけがえがないと判断されたが、富士山は山としては平凡なので自然遺産にならず、多くの芸術の元となったり、信仰の対象となったことから文化遺産に指定された。
・またビキニ環礁や原爆ドーム、アウシュビッツなどの人類の愚行の象徴も世界遺産として認定されている。これはこれらの愚行を繰り返させないためでもある。
・変わった世界遺産としては、シュトルーヴェが19世紀に行った地球の大きさを測るプロジェクトのための測量点なんかも世界遺産認定されている。
忙しくない方のためのどうでもよい点
・今回は世界遺産の定義について学習するという興味深い内容。「不動産」であるというのは確かに大きな意味があるな。どこかに移設などは出来ないので、そこにあり続けるということが大事なんだから。
・で、富士山は文化と信仰の対象なわけであるから、現在観光地として汚染の極みにある状況はいろいろと問題なんだよな。最近になって観光公害のことが問題視されるようになったが、あれもそもそもこのままだと世界遺産取り消しって話も出て来てるんだよな。
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