寸断された道路
今年の能登半島地震では、道路が寸断されて復興作業が滞るという被害が生じた。なぜ道路に被害が出たかを調べたところ、盛り土の崩壊が原因になっていることが分かってきたという。地震から道路を守る研究について紹介。
今回の地震では強い揺れが長時間続いたのが特徴だという(阪神で15秒だったのが、40秒)。そのために建物に対する破壊力が大きかったとか。今回の地震で42路線の道路の最大87箇所が通行止めになったという。特に主要道路であるのと里山海道が被害が大きく、ようやく最近に通行再開になったという。被害地域を調べたところ、共通点は盛り土部分が崩落していること。山を削ってその土で谷を埋めた部分が盛り土であるが、調べたところ水が溜まっていたという。元々谷は水が流れやすいが、これらの水が盛り土の中に溜まることで揺れに対して非常に崩れやすくなるということが、模型での実験でも確認されている。
盛り土崩落を防ぐ技術
日本の地形的に道路に盛り土を使わないというのは無理なので、対策としては盛り土に水を溜めないことになる。その方法としては排水工を作ることだという。模型による実験でもその効果は確認できており、実際にこれを装備した輪島道路では盛り土の崩壊は起こっていない。
ただ全国の道路の盛り土のすべてに排水工を作るというのは難しいので、次善の策としては、石を金網でくるんだ「ふとんかご」というものを盛り土の先端部に据えるという方法がある。実際に模型での実験でもふとんかごが盛り土を支えることで崩落を防いでいる。
震災の教訓が生きた橋脚と、新たな課題が浮上したトンネル
さらに橋については今回の地震では大きな被害はほぼなかったという。これは阪神大震災での被害を元に安全基準が変わり、橋脚の耐震補強などがなされていたからだという。過去の地震の教訓が生きたわけである。
一方でトンネルには新たな課題が浮上した。従来は地震に強いといわれていたトンネルであるが、今回の地震では中屋トンネルと大谷トンネルではトンネルの内側を多う部分が崩落する覆工という事故で道路が塞がれてしまった。さらに調べたところ、中屋トンネルではトンネルを支える鉄骨が50センチも歪んでいたことが分かったという。地盤が大きくズレたことでトンネルが歪んで覆工が発生してしまったのだという。この覆工を防ぐためには新たな補強の方法を考える必要がある。道路のネットワーク機能を守るための研究はまだまだ必要である。差し当たっては車線数を増やすなどの対策は考えられるという。
以上、道路の寸断を防ぐための研究。まあ盛り土が弱いのは当然であって、住宅地でも盛り土の上に建てられたところは、地震で地盤が崩れて傾いてしまうところが多く問題となっている。道路の場合は沈下を1メートル以下ぐらいに抑えられたら、その日のうちに復旧できるというようなことを言っていたが、家の場合は1メートル傾いたら収拾がつかない。
トンネルは従来は地震には強いというのが常識だったのだが、場合によっては覆工が発生するとなったら話は変わる。あんなコンクリートの塊が頭上から落ちてきたら命取りである。地盤のズレが問題とのことなので、やはりトンネルも断層があるようなところに作ってはいけないってことだろう。しかし原発でさえ活断層の真上に作っちまう国だから・・・。
それに車線数を増やすのも対策とのことだが、車線数の増加は建設コストに跳ね返るので、地方の高速道路なんかも対面四車線の予定が片側だけの対面二車線にグレードダウンされたしてるのが現状なんですが・・・。
忙しい方のための今回の要点
・能登半島地震では42路線の道路の最大87箇所が通行止めになるという大被害が復興を阻む原因となった。
・道路の崩落は盛り土部分で起こっているが、盛り土が水を含むと揺れで崩れやすくなるので、その対策が重要である。
・盛り土をしっかり固めた上で排水工を作るのが基本だが、次善の策としては石をカゴに詰めた「ふとんかご」を盛り土の先端に置いて崩落を防ぐ方法がある。
・橋脚については阪神大震災の教訓から安全基準が高められ、従来の橋脚も耐震補強などがなされたことが幸いし、大きな被害は発生しなかった。
・一方、地震に強いといわれていたトンネルは、地盤のズレによってトンネルが歪んで、内部のコンクリートが崩れる覆工が発生しており、この対策が課題となっている。
忙しくない方のためのどうでもよい点
・とにかく道路って物流の鍵なので、災害時には堅牢であることが求められます。日本の土木技術はまだまだレベルが高いはずなので、この辺りの研究は続けてもらいたいところ。
・ただ安全性の問題には、必ず経済性の問題も絡んでくるんだよな。特に今の落ち目となっている日本では・・・。
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