教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

2/16 テレ東系 ガイアの夜明け「"異常気象"と共に生きる~気候の変化に対応せよ~」

 地球温暖化に起因したと見られる異常気象が全国的に問題となっているが、そのような激変する気象に対応しようと奮闘する人々を紹介。

 

洪水に耐える水に浮かぶ家

 まず温暖化と共に増加した豪雨による洪水。これに対応する住宅を開発しているのが一条工務店。なんと水に浮く家だという。通常の住宅では床下の通気口などから水が入ってくるのだが、ここに特殊な浮きを入れることで水位が上昇すると蓋がされるようにしてある。また窓は強化ガラスを用いた三重構造の上に、パッキングは一枚物の防水仕様であるから水が全く入ってこない。さらには水位が上昇してくると家が水に浮くのだという。

 こんな本もあるようです

 そもそも浮く家にしたのは、最初は水が入らない密閉した家にしようとしたところ、水位が増したら家が浮いて傾いてしまったのだという。浮かないようには重くするしかないがそれはコストがかかる。そこで逆手に取っていっそのこと浮く家にしようという発想になったという。浮いた家は4隅にセットしたバネで固定しているので、流されていくことはないし、水位が下がってくるとまたほぼ元の位置に戻るようになっている。

 一条工務店ではさらに一般住宅用に、非常時にはめ込んで水の侵入を2日間防ぐ設備の開発も行っているという。

 

マイワシを北海道の新たな名物に

 昨年はサンマの高騰が社会問題となったが、気候変動によってこのような魚種の変化も起こってくる。サンマの水揚げが多かった北海道ではサンマの水揚げは例年の半分にまで減少、その代わりに真鰯の水揚げが増えてきているという。これは北海道の沿岸に暖水塊が存在するためで、冷たい水に乗って移動するサンマがそれを避けるために、沿岸から離れたコースを通るようになってしまったのだという。

 真鰯は北海道にとってはあまり馴染みのある魚ではなかった。そこで今までサンマの缶詰を作っていた工場がイワシの缶詰生産に乗り出し、釧路では北海道マイワシフェアを実施して、鰯を北海道の新しい名物にしようとしている。釧路の居酒屋も試行錯誤で鰯餃子を試作したりなど新たな料理に挑戦している。

 

 確かに早速釧路のこんな商品も出ております

 

酒造りのための環境を求めて中津川の酒蔵が北海道へ移転

 一方、この気候変動の影響で大胆な決断をした人がいる。それは岐阜県中津川市で三千櫻酒蔵を営んでいた6代目社長の山田耕司氏。彼は近年の気温の上昇で、段々と自分が理想とする酒の仕込みが出来なくなってきたことに不安を感じていたのだという。そして彼がした決断は北海道への酒蔵の移転だった。

 彼が移転先に選んだのは北海道中央にある東川町。一昨年、東川町が酒蔵を作って運営を任せられる人を募集した。山田氏はこれに応募したのだという。建設費3億5千万円の内、3億円は町と国が負担で、山田氏は5000万円を負担する。東川町は大雪山の豊かな雪解け水があり、町の水道水はすべてこの伏流水で賄っている。また東川米は金賞を受賞した実力であり、待ちの農家が新たな酒米を提供することになっている。日本酒を新たな特産品にしたいと考えた町の思惑と、酒造りのための理想的な環境を求めていた山田氏の利害が一致したのである。

 山田氏とその家族、さらに二人の従業員も家族ごと東川町に引っ越すこととなった。山田氏の老母は一人だけ残って名古屋の高齢者施設に入居するととなった。「一人は慣れているし、向こうに行って足手まといになってはいけない」という彼女であるが、やはり一抹の寂しさは否定できない。

 中津川の酒蔵からはタンクなどを東川町に持っていくことになった。出発の日は街の人々が盛大に送り出す。地域に密着した酒蔵だったのでやはり寂しさもあるが、山田氏は絶対に向こうで成功するという決意を固めていた。

 三千櫻酒造の製品は早速東川町のふるさと納税返礼品になっている模様

 そして東川町での仕込みが始まった。東川町の年間気温は中津川よりも7度低い。冬の外気は手が紫色になるような冷たさだが、山田氏の理想通りの環境で、これは満足のいく酒が仕込めると意気込んでいる。

 12月、ようやく新酒のお披露目となった。山田氏曰く「想像以上に良いものが出来た」とのことで押しかけた地元の人々にも評判は上々、現在予約が一ヶ月先まで詰まっているとのこと。

 

 洪水対策での水に浮く家というのは、実は私も以前に船に乗った家というのを考えたことがあるが、本当に挑戦する住宅メーカーがあったとは驚き。ところで水害に対しては良いんだが、地震の時は大丈夫なんだろうか。それとゴムパッキンの類いは耐用年数があるので、何年か経ったから交換しないと水密を保てないと思うのだが。

 異常気象で魚種が変わってきたとか栽培できる作物が変わってきたという話は以前から耳にしていたが、愛媛が温州みかん栽培には熱くなりすぎて、オレンジを栽培するようになったり、青森がリンゴをやめて桃を栽培したりなどという話になっているようなので、確かに食品の産地が変わってしまいそうだ。ただそうやってどうにかこうにか凌げる内はまだ良いが、この調子で温暖化が進んだからそれでは追いつかなくなる危険がある。だからNHKが言っていた2030年に分岐点があるという話になるのだが。

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 それにしても酒の仕込みのための環境を追いかけて北海道へ移転というのは大胆な話である。酒は気温だけでなく米や水も重要なので、それも問題ないものが確保できるという確信の上で移転したのだろうとは思うが、やはり酒の味は以前の三千櫻とは変わるだろうとは思う。まあ以前のものよりも美味い酒が出来ればそれで良いんだろうけど。中津川は内陸だから、とにかく夏は異常に暑いの間違いないのだが、最近は冬でも寒くならなくなっていたのか。あそこは本来は冬は相当寒かったはずなんだが。とにかく気候が世界中でおかしくなっているので、今のうちに手を打たないと大変なことになる。こういう点では、科学を無視して個人的な利益だけを追いかけていたトランプがようやく大統領の座を去ったのは朗報ではあるが。

 

忙しい方のための今回の要点

・気候変動による洪水の増加に対応するため、一条工務店が水の侵入を防いで増水時には水に浮く家を開発した。
・さらに一般家庭用に、いざという時に家の周りに取り付けて2日間水の侵入を防ぐ装置の開発も進めている。
・温暖化は魚種の変化も進めた。北海道ではサンマの漁獲量が激減し、代わりにマイワシの漁獲が増加している。そこでマイワシフェアを実施して、マイワシを北海道の新たな名物に使用という動きが現れている。
・また中津川の三千櫻酒造では、気温の上昇で思うような酒の仕込みが出来なくなった社長の山田氏が、酒蔵の北海道への移転を決意した。酒蔵からタンクなどを運び出し、北海道に新たに建築した酒蔵に移転、現地の水と酒米を使って新たな酒の製造を始めた。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・それにしても酒蔵の移転は大胆です。酒蔵を移転すると菌の環境も変わるので普通はなかなかやらないんですが。まあどちらにしても以前と同じ酒にならないのは間違いないです。要は新たにもっと納得が出来る酒を造ろうと言うことでしょう。

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