教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

1/26 NHK 歴史探偵「戦国レジスタンス 村上海賊&雑賀衆」

信長に抵抗した村上海賊と雑賀衆

 今回の主役は戦国時代に中央の権力から最後まで独立を守ろうとした独自勢力、村上海賊と雑賀衆・・・は良いんだが、共に本願寺派として信長と戦った連中なので、ほんの2時間ほど前に放送された「英雄たちの選択」とネタがモロ被り、しかも映像も使い回しが多いせいで全く同じものが登場したりという「手抜き」と思える内容。NHKは放送素材の有効活用が普通になされるにしても、ここまで露骨だと「何だかな」というのが本音。

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瀬戸内の地の利を利用した村上海賊

 まずは村上海賊であるが、瀬戸内海に住んでいた海の民だと言われている。番組では村上海賊の本拠であった能島を訪れているが、要は村上海賊はこの周辺の複雑な潮の流れを熟知しており、圧倒的な海戦力を誇っていたということであり、往来する船から通行料を徴収して安全を保証することで収益を得ていた。さらに秘密兵器焙烙火矢なども使用しており、これが木津川の戦いでの織田艦隊の殲滅に働いている。なお焙烙花火に必要な火薬は海外との交易で得られていたと推測されるという。実際に海外でしか入手できない染料を使用した陣羽織なども見つかっているという。大友宗麟からの書状も見つかっており、村上海賊は大友宗麟を介して海外と取引をしていたのではとのこと。

 なお村上海賊の海上での戦闘力は圧倒的で、関所破りをした船を挟み撃ちにしてボコボコにしたという記録も残っているとかで、それをわざわざ船を使って再現しているのだが例によってこれはあまり意味もない。なお村上海賊については以前に「にっぽん!歴史鑑定」でも扱っており、それの方が内容は詳しい。

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鉄砲戦術に長けた雑賀衆

 次が雑賀衆となるが、雑賀衆は鉄砲での戦闘に長けていて、その射撃の腕は見事なものであったという。雑賀衆が用いていた鉄砲は当時の一般的な火縄銃よりも小口径のものであり、それらはそもそも狩猟用の火縄銃である。家督争いなどで不安定だった紀州の中で身を守るために人々は自ら自衛したのだという。だから身近な狩猟用の銃を武器にしたのだとのこと。しかし小口径の銃は威力が低いという弱点がある。そこでその銃を有効に使いこなすために、射撃は30メートルに接近してから行うべきなどの技があったという。実際に実験すると、この距離からだと命中精度も非常に高く、厚さ1ミリの鉄板を貫通することも出来たという。鉄砲を使った戦術を徹底的に研究していたのである。さらに「こみかへ」と言って射撃手と込め手を分けて一番射撃に長けた者が連続射撃するという戦術も採用していたという。

 なお村上海賊と雑賀衆にはつながりがあったという。村上海賊が雑賀衆に対して発行した通行手形なども見つかっているとのこと。で、この両者が共に信長と戦うことになるのが本願寺の石山合戦なんだが、もうここから以降は完全に「英雄たちの選択」と共通というか流用というか・・・。

 

 

共に本願寺攻めの際に信長相手に奮戦する

 とにかく信長の本願寺攻めに対して雑賀衆は銃で反撃し、信長自身が足を銃撃されるという事態に至って攻撃は頓挫している。そこで兵糧攻めに移るが、そこで艦隊が村上水軍に打ち破られることになる。そこで信長は紀州に攻撃を行うが、ここでも雑賀衆の鉄砲に苦しめられることになる。さらには村上海賊に対しては味方に引き入れようと工作するが拒絶されたという。

 と言うわけで共に信長に対しては最後まで反抗したのであるが、結局はその後に登場した秀吉によって平定されてしまうことになる。なお海の権益を秀吉に奪われた村上海賊は、後に朝鮮通信使の案内役をしていたことなどが記録にも残っているという。

 

 

 以上、村上海賊と雑賀衆だが、どうも扱いが中途半端な印象がつきまとった。さらには流用ネタの多さに相変わらずの大して意味のない取材と実験となっており、この番組につきまとう作りの雑さ、無駄が目立つこととなっている。しかも相変わらず佐藤二朗の不要さは極限にまで達している。

 と言うわけで、例によってNHKのこの手の番組のレベル低下ばかりが私の目にはついてしまうという状況。どうも最近のNHKはいろいろな意味でヤバいと感じる。報道の偏向云々を抜きにしても、最近登場する番組の内容のレベル低下が著しい。大分昔から民放においては見る気のする番組がほとんどなくなっているが、近年はNHKでもそういう番組はジリ貧である。NHKの番組とまで決別することになったら、私のこのブログも終了を迎えるときになってしまう。

 

 

忙しい方のための今回の要点

・信長が中央で権力を強める中で、最後までそれに抵抗した独立勢力が村上海賊と雑賀衆である。
・村上海賊は瀬戸内の複雑な潮流を熟知し海戦に長けていた。そのために通行する船舶から通行料を徴収することで財源となしていた。
・火薬を用いた焙烙花火を兵器として使用していたが、そのための火薬は大友氏などを介しての海外との交易によって得ていたと考えられる。
・一方の雑賀衆は情勢が不安定な紀州において、人々が自衛のために狩猟用の火縄銃を武器として武装集団となったものである。
・彼らは銃を使った戦術を徹底的に研究しており、その性能なども完全に把握していた。
・この両者が信長と直接対決したのが本願寺の石山合戦だが、ここで信長は雑賀衆の鉄砲と村上海賊の海戦で大被害を出す。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・まあ信長にはどうにか対抗できた両者ですが、より圧倒的な権力を背景にした秀吉には残念ながら抵抗を続けることは不可能でした。まあ歴史の流れですね。

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