教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

1/25 NHK 歴史探偵「伊能忠敬の日本地図」

実は最初は地図作成が目的ではなかった

 何やら今回は唐突に伊能忠敬が登場である。とは言うものの、実際は今まで伊能忠敬はこの手の番組では何度も扱われているので、今回の内容はもろに使い回し。実際に今回の再現映像は明らかに以前に見た記憶がある(この役者さんの顔を覚えている)。恐らく「ヒストリア」か何かで使ったものの使い回しである。いかにもお手軽お気楽で安作りなこの番組らしい。

伊能忠敬

 伊能忠敬と言えば、佐原の商人で実は地図作成を始めたのは55才からである。しかも元々は彼は地図を作ろうとしていたのではなく、地球の直径を測定しようとしていたという。ただ正確にそれを測定するには長い距離を測って角度の差を求める必要があるので、江戸から蝦夷までの距離を測ろうと考えていたという。しかしそれには幕府の許可が必要でなかなか困難である。そこで「蝦夷の地図を作る」というのを蝦夷行きの口実にしたのだという。当時、蝦夷周辺に外国船が出没しており、幕府は蝦夷の領土権主張などのためにも蝦夷の正確の地図を必要としていたのである。忠敬は狙い通りに蝦夷行きの許可を得ることに成功する。

 

 

忠敬が地図を作成した手法

 さて忠敬がどうやって距離を測ったかだが、最初は歩測で行ったという。番組ではそれを再現しているが、実際にやってみるとかなりの誤差が出るという結果に(まあ当然だわな)。忠敬が歩測で正確に距離を測れたのは日頃の鍛錬の賜物らしい。後はこの距離と角度の測定によって地図が作れるというわけである。

 忠敬はこれで当初の目的である緯度1度の長さは110.7キロであるということを測定し、地球の直径を推測することに成功した。ちなみにこの距離、現在の測定と比較しても誤差は0.3%という驚異的な精度だという。

 ちなみに最初は口実だった地図作りだが、それの出来が良かったことから幕府にさらなる作成を求められるし、忠敬自体も地図作成に目覚めたのか地図作成はさらに全国に及ぶことになる。最初は歩測だった距離測定も、この後はヒモを使ったり台車付きのクルマを使用したりするようになったという。

 もっともそうなったところで測定が大変であることは変わらない。忠敬は海岸に沿って歩いたのだが、それは実は簡単ではない。番組では琵琶湖岸を歩いてみるというどうでも良いお手軽再現実験を行っているが、想像できるとおり、ロープを張るのも大変だし、湖岸には歩けないところもあるしと難所が続出。歩けない場合には船を使うしかなかったという(実際に忠敬もそうしたらしい)。で、後で測定した距離と角度に基づいて線をつないでいけば地図が出来上がるということである(無意味な実験だな・・・)。

 

 

最終的には幕府直轄事業となる

 最初はほとんど個人で行っていた地図作成だが、やがて幕府直轄事業となって作成が大規模になっていく(5人だったメンバーが20人に増えたという)。これもあって伊能忠敬の地図も初期のものと後のもので測定点が多くなっており、より精密になっているという。また伊能隊に住民なども積極的に協力するようになる。彼らは測量を手伝ったり、さらには一行をもてなしたりしたという。徳山藩に測量隊に振る舞った料理の記録が残っているらしいが、幕府の要人に振る舞うに相応しい豪華でさらに滋養強壮に適した料理になっているという。また忠敬の訪問時に測量技術を学んだ者などもいたという。なお測量の知識を学ぶ意味は、土地問題などが発生した時には地図の提出が不可欠だったからだという。

 

 以上、伊能忠敬について・・・なんだが、どうでも良い無意味な実験があって内容が薄いってのはいかにもこの番組らしいところ。今回初めて知るような知見は全くなかったというのが現実だったりする・・・。

 

 

忙しい方のための今回の要点

・伊能忠敬が地図の作成を始めたのは55歳になってからだが、当初の目的は地球の直径を測定するためで、そのための蝦夷に行くための口実として幕府に地図作成を願い出た。
・当時、蝦夷周辺に出没する外国船に脅威を感じていた幕府は、蝦夷の測量の必要を痛感しており、忠敬に蝦夷行きの許可を出す。
・忠敬の測量は当初は歩測によって距離を測り、それと角度のデータを組み合わせていた。しかし後の測定では距離を測るのに縄やら計器を組み込んだ測量車なども使用するようになった。
・幕府は忠敬の地図の精密さに感心し、また忠敬も地図の作成に興味を持つようになったことから測量は全国に広げられ、幕府直轄事業となる。そのことによってスタッフも増え、測量もさらに精密に行われるようになった。
・また各地でも幕府の事業に住民が協力したり、一行をもてなしたりするようになる。また忠敬から最新の測量技術を学んだ者などもいる。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・佐原の伊能忠敬記念館を訪問したことがありますが、「伊能忠敬を大河ドラマに」という署名を集めてました。さすがに地図作っただけのオッサンを主人公に1年のドラマは無理ではと思うのですが。スペシャル時代劇ぐらいはありですが。まあその前半生にも結構ドラマはあったというのは、以前に英雄たちの選択で言ってはいましたが。

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